「東京チカラめし」が東京で再始動 今度はどう売っていくのか
2011年に1号店を東京・池袋にオープンした「東京チカラめし」。「煮る」のではなく「焼く」という珍しいスタイルの「焼き牛丼」を280円(創業当時)という低価格で提供して人気を獲得し、一気に店舗が広がった。 【画像】あの「焼き牛丼」が帰ってきた! 東京チカラめしの人気メニューを見る 全盛期の2013年には130店舗以上を展開していたが、翌年からは食材の原価高騰と人材育成の課題が重なり、閉店を余儀なくされた。 運営上の課題だけでなく物件の都合も重なり、閉店は止まらず。2023年11月には、国内店舗がフランチャイズ運営の大阪日本橋店のみとなった。そうした経緯を経て2024年5月、都内の九段第二合同庁舎内に「東京チカラめし食堂」がオープンした。 焼き牛丼以外に週替わりの定食や麺類なども扱う新業態となり、館内で働く職員だけでなく一般の人も利用できる。 東京での再始動にあたり、どのように東京チカラめしを売っていくのか。同ブランドを運営するSANKO MARKETING FOODS(サンコーマーケティングフーズ)の社長 長澤成博氏、東京チカラめし食堂 業態長 小川直樹氏に、新業態の戦略や再始動への思いを聞いた。
大ヒットから一転、閉店ラッシュへ
東京チカラめしは、東日本大震災の後、「東京から日本を元気にしたい」という思いのもとに誕生したブランドだ。看板メニューに、「煮る」のではなく「焼く」調理法を採用した「焼き牛丼」を開発。後発のブランドとして大手の牛丼チェーン店と戦っていくには、独自のアプローチで攻める必要があったためだ。 タレを塗ってスチームオーブンで焼いた牛肉をご飯の上に乗せ、かけダレをかけて提供する。焼くことによる肉の香ばしさや焼きダレとかけダレの2種が絡み合うパンチの効いた味わいが特徴で、280円(並、みそ汁付き)という低価格も追い風となり、あっという間に繁盛店に。2011年の1号店オープンから2年半の間に、130店舗以上まで拡大した。 「当時は新店舗を出せば行列ができる状態でした。2012年には年間で約80店舗がオープンし、これは2週間に3店舗を出店するペースです。メイン食材である牛肉と米を大量購入してスケールメリットを得ることで、低価格を維持していました」(長澤氏) ところが、2014年には状況が一変。牛肉と米の調達価格が急騰し、1杯300円前後での提供が難しくなった。加えて、人材の育成が出店ペースに追いつかず、品質やオペレーションの低下が目立つようになったという。 「50店舗ほどに増えたところで、店舗によって、焼き牛丼の味や店内の清掃状態などにブレが生じてきました。というのも、煮込んだ牛肉をご飯の上にかけるだけの牛丼と比べて、当社の焼き牛丼は『タレを塗った牛肉を焼き、丼に並べてかけダレをかける』という手間のかかる調理法に加えて、肉を焼いた網の清掃も必要になるため、オペレーションの負荷がかかるんです」(長澤氏) 手間をかけたぶん、おいしさは引き出されるが、それがあだとなった。「早い、安い、うまい」を求める顧客の期待に沿うサービスが提供できなくなり、2014年から閉店ラッシュに。一気に規模が縮小し、2023年11月には国内1店舗に激減した。