手が使えなくても「口と足で表現する世界の芸術家たち」の絵画展、開催中
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絵画展「口と足で表現する世界の芸術家たち」が10日、東京都・中央区晴海1の「晴海トリトンスクエア」2階グランドロビーで始まった。12日まで。午前10時~午後6時。入場無料。 同展では、生まれつきまたは事故や病気などで、手の自由を失った世界各国の画家39人が、口や足に絵筆をとり描いた絵画50点を観ることができる。作品の隣には、画家の写真とプロフィールも展示している。
応援してくれる人のためにがんばって続けてきた 目標は東京で個展を開くこと
会場では、東京都・大田区在住の画家・古小路(こしょうじ)浩典さん(52)の実演が行われた。古小路さんは、時折、会場に同伴しているヘルパーの男性に絵の具をパレットに出してもらえるよう指示。口に絵筆をくわえ小刻みに動かして、クリスマスをモチーフにした動物の作品を描いていた。
古小路さんは、岡山で中学3年生のとき、器械体操部で床運動の練習中、頭から落下して首の骨を折り、全身まひになったという。退院後、知人のすすめで、口に筆をくわえて、本格的絵画指導を受け始めた。 「初期の頃は思うようにできず、イライラした。絵なんて才能のある人がやるもんだ、なんでそんな時間をつぶすようなことをやらなきゃいけなんいだ」と思い、辞めたくなったことも。しかし、「先生に教わっていて、おふくろも応援してくれているし、と思ってがんばって続けていたら、どんどん欲がわいてきた」。器械体操をやっていたとき、一つの技を習得するまで、何度も挑戦し続けた。絵の挑戦も同じ気持ちでのぞんだ。2年ほど経つとようやく描いた絵を額に入れてみようか、と思えるようになったという。 今後の目標は「家族から離れて、東京にやってきてそろそろ20年。節目として、都内で個展を開きたい。そのくらい大きな目標をもって、モチベーションを保っていきたいですね」と語っていた。古小路さんの実演は12日午前10時から午後4時30分にも予定されている。
手の自由を失った人たちの学びと自立を願って
古小路さんは「口と足で描く芸術家協会」の準会員で、同協会は1956年、欧州のリヒテンシュタイン公国で発足し、世界74カ国、800余名(2013年現在)の会員を有する。手の自由を失っても、口や足で描くことを学び自立したいと望む人たちに、絵を学ぶための奨学金支給をはじめ、設備、道具の支援などをしている。絵画制作を続けられるよう、画家の描いた絵から絵葉書、カレンダー、文房具、タオルなどのグッズの販売も行い、会員たちが画家を生業とできるようにしている。 同展を主催する三菱電機テクノサービス(東京都・荒川)は、晴海だけでなく全国にある同社営業所拠点でも巡回展示を行っている。今年で24年目。 広報室主任の福富芳子さんは、「東京都小平市にある当社の研修施設の宿泊所が殺風景で、絵か何かを飾ってみてはということになり、1991年に同協会に所属する画家さんの絵を購入したのが始まりです。翌年施設内で展覧会を開くと好評で、その後、毎年展示内容を変えて全国で展覧会を開いています」。同展は同社社員やその家族がボランティアで運営されているという。