ドリブルの立教。サッカーか。いえ、ラグビー。95年前に旋風を起こした。
後半36分。背番号20の渡辺大斗が登場する。J SPORTSの実況が「國學院久我山時代はサッカー部の3軍。受験浪人を経て入学後に勧誘されて入部」と教えてくれる。オールドな立教びいきにはたまらぬ情報だろう。学生ラグビー好き、ことに母校へのファン心理は、本コラムの解釈では「強豪校の名選手が入るとうれしくて、無名や初心者が加わるとまたうれしい」。実利と浪漫を同時にかじりたい生き物なのだ。
印象に残るシーンがあった。6点を追う後半。進む時計で79分40秒といったあたり。ララックをさばく川畑俊介が敵陣の左奥深くをめがけて蹴り込んだ。
うまく運べばトライの可能性もある。そうはならなくともコーナーへ進むキックなのでひどいことにはならない。逃げ切りたい筑波を心理と陣地の両面で押し込む。満点のプレー選択ではなかったか。
結果は相手投入のラインアウト。直後のタッチキックはさほど伸びない。ここで「ロスタイムは4分です」の場内放送は流れた。レフェリーとの意思疎通でリーダーは正確な残り時間をつかめていたはずだ。それにしたって80分、つまり後半の40分、はやる気持ちを脇へよけ、よくぞ冷静にエリアを刻んだ。
昨年度の記録を調べた。筑波には10-68の大敗を喫している。なのに、よく勝つ集団のように鋭い判断だ。さあ、もういっぺん。立教は力をつけた。
ちなみに今季、筑波はすでに慶應を34-12で退けている。となると立教は黒黄のルーツ校には負けなさそうだ。と書いて、ここのところは甘くはない。グラウンドのバトルと机上の勘定は別の世界なのである。
ひとつの大勝利や大健闘が次の好結果へ必ずつながるわけではない。だからこそ、ひとつの勝負に価値はある。どこが強いかでなく、どちらが強いか。「対抗戦思想」のいわば醍醐味だろう。本年度の序盤、立教は筑波に6点差で敗れた。「怒涛の如く」という形容のふさわしい攻守とは違った。じわっと染み出す地力が得失点を定めた。まだ足りない。しかし上階へ上階へと階段を昇ってはいる。