宮沢りえの首を絞めすぎてりえママから怒られ、石原軍団から山盛りのフルーツとヘネシー…俳優復帰の高知東生が眺めた昭和と令和の役者魂
2016年の覚醒剤と大麻所持による逮捕から8年、高知東生が商業映画に復帰した。依存症からの回復を題材とした映画『アディクトを待ちながら』で主演を務める。1994年のデビューから、これまで役者人生をどう歩んできたのか、そして、今の芸能界をどのように見ているのか。本人を直撃した。 【画像】覚醒剤と大麻の所持で逮捕され、大きなニュースとなった大物ミュージシャンの大和涼を演じた高知氏
高知東生(以下、同) え、このインタビュー、俺一人? 監督もいないの? ――記事は二部構成で、まずは高知さんお一人で、このあとナカムラサヤカ監督と田中紀子プロデューサーも交えて3人での取材もあります。 あぁ、よかった。俺一人だと途中で気絶するかもわからん。 ――なんで気絶するんですか(笑)。 緊張とかいろいろあるでしょう。一人だと余計なこともベラベラしゃべっちゃうしさ。 ――商業映画に出演するのは、およそ9年ぶりということですね。 今回の映画のナカムラサヤカ監督とは、2021年に「ギャンブル依存症問題を考える会」のTwitterで公開した連続ドラマ『嘘つきは○○のはじまり』で初めてご一緒させていただいて。依存症がいかに難しい問題であるのか、一緒に考えてきた仲間です。それで、次は映画でも啓発していきたいと思って出演しました。 ――役を演じるのも久しぶりでしたか。 それがさ、これ言っていいのかな。この映画、俺、演じてないのよ。役と設定はあったけど、セリフは全部アドリブ。というのも、この映画はある意味ドキュメンタリーの要素もあるわけ。だから役者をはじめて30年近く経つけど、一番緊張したね。意識としては仕事というよりも、生の声、真実の言葉を、ありのまま映画として残したかった。
宮沢りえの首を強く締めすぎたら……
――そもそも高知さんは、芸能プロダクションの社長などを経て、芸能界へ入ったわけですが、演技の勉強というのは? 最初にお世話になった事務所がフロム・ファーストプロダクションというところで、モッくん(本木雅弘)をはじめ、竹中直人さん、石野真子さん、今は独立した北村一輝、ほかにも錚々たる俳優を抱える会社だった。そこで俺も芝居の稽古してもらえるのかと思っていたら、当時の社長が「する必要ない」って。でもあの頃の俺は、演技の経験はゼロ、標準語もまともにしゃべれない、漢字も読めない。それでいきなり現場に行ったもんだから、大変なんてもんじゃない。NG出しまくり。しかもデビュー作なのに、ゴールデンタイムのドラマだったからね。 ――1993年に日本テレビで放送された『西遊記』ですね。 そうそう。日テレ開局40周年記念の特別ドラマ。モッくんが孫悟空、宮沢りえちゃんが三蔵法師の役で。俺は銀角大王っていう悪役だったんだけど、演技はもちろん、スタッフがしゃべっている専門用語はわからないし、とにかく大変だった。監督が「わらえ」って言ってるから、竹中直人さんと同じ事務所の人間としては、あの有名な「笑いながら怒る人」をやれってことだなと思って、ヘラヘラ笑いながら長台詞を言ったら、「ばかやろー!」って缶コーヒーが飛んできた。「わらう」って業界用語で「片づけろ」って意味なんだよね。 ほかにも、俺が三蔵法師役の宮沢りえちゃんの首を絞めるシーンでは、なにしろ加減がわからないもんだから、ギューって強く締めすぎちゃって、りえちゃんが「く、苦しい……」って。すかさずマネージャーのりえママがすっ飛んできて、怒られたね。 ――芸能界に入る前、高知さんはどういう映画を観ていたんですか? 俺は家庭環境のせいで、映画は任侠ものだけ。とくに好きだったのが金子正次さんの作品で、名作『竜二』にはじまり、陣内孝則さん主演の『ちょうちん』、哀川翔さんと的場浩司さんダブル主演の『獅子王たちの夏』とか。映画の中で陣内さんが、警察に手錠をかけられてニタ~ッと笑うシーンがカッコよくてね。俺もいつかああいう役やってみたいなぁと思ってたら、25年後に本物の手錠かけられちゃったよ。