「無双」のバッティングにも実は弱点があった…大谷翔平 三冠王獲得に立ちはだかる「2つの試練」
まさに「打った瞬間」だった。 バッターボックスの大谷翔平(30)も右翼手も一歩も動かず、打球がライトスタンド2階席最上段に突き刺さるのを見送った。全米を唖然とさせた打球速度191㎞/hの超速&超特大の32号――右ヒジ手術を受けて打者に専念している今シーズン、大谷の打棒が大爆発している。 【思わず二度見!】長身がよく目立つ…佐々木朗希が「唐揚げ買った!」衝撃の現場写真 「このペースで行くと、ホームランは48本前後、打率は.310~.320、打点は116前後で出塁率は4割以上、OPS(出塁率と長打率を足し合わせた指標)は1.050、盗塁は40以上となる。7冠も夢ではない物凄い数字になります」(スポーツ紙MLB担当記者) 二刀流時代は疲労の影響で後半戦に成績を落としたり、故障したりするケースが見られたが、今季はその心配がない。 これまで世界中の誰もが想像すらしなかった″日本人初のメジャー三冠王″の誕生が現実味を帯びてきているのだ。 だが、そこは世界最高峰の舞台、メジャーリーグ。易々と夢を叶えてはくれない。事実、三冠王獲得のために大谷が乗り越えなければならない「2つの試練」がデータでハッキリ示されている。 一つ目の試練は「得点圏打率」。昨季の.317から.247へ大きく数字を落としているのだ(7月30日現在。以下同)。 「満塁時はさらに深刻で、昨季は.375も打っていたのに今季は.167と2割にも達していない。これは多分にドジャースへの移籍が関係していると思われます。スターが大谷しかいない弱小球団のエンゼルスと超一流選手揃いの常勝球団では、ファンやメディアの注目度も重圧もまるで違う。ましてや移籍1年目。チームメートの信頼を得て自分の居場所を作るには、結果を残して認めさせるしかない。チャンスで力み、大振りになってしまったがゆえの数字でしょう。3月、4月の得点圏打率が特に悪いのは″早く結果が欲しい″という焦りの表れ」(スポーツライターの藤本大和氏) 大谷も人の子なのだ。それでもリーグ2位の76打点を挙げられているのは、走者がいる場面で打席に立つ機会が多いから。ドジャース移籍の最大のメリットだ。 もう一つの試練が「弱点」だ。 昨季.394と打ちまくっていたフォーシームの打率が.301へ、同じく.381だったカッターの打率が.267へ低下しているのだ。 30年にわたりメジャー取材に携わっている友成那智氏が解説する。 「特に内角高めのフォーシームを.083と苦手にしており、追い込まれてから釣り球にひっかかって空振り三振を喫するケースが目につきます。7月19日のレッドソックス戦ではニック・ピヴッタに3三振を喫しています」 シンカーやスプリットなど「低めの落ちる球に目付けをして打率を6分~1割5分も上げたが、そのぶん高めの速球で攻められると目線が狂う」とは前出・藤本氏の分析だ。このデータはすでに各球団が把握。「6月ごろから高め勝負が徹底されている」と友成氏は指摘する。 「昨年も一昨年も、メジャーの投手は高低を使った攻めをしていました。ただ、昨季までの大谷は高めのフォーシームに強かったので、勝負球は低めの変化球だった。それが高めボールゾーンの釣り球に切り替わりましたね」 三冠王獲得に立ちはだかるのは、相手投手だけではない。大谷と7点差の83打点でトップを走るブレーブスのマーセル・オズーナ(33)はホームランも1本差の2位。最大の脅威と見られている。 「オズーナが打点を稼ぎやすい3番打者であるのに対し、大谷はトップバッターですからね。爆発力があるので波に乗せると怖い。打率部門では、それぞれ過去に2回、首位打者に輝いているブリュワーズのクリスチャン・イェリッチ(32)とパドレスのルイス・アラエス(27)がライバルとなるでしょう」(前出・友成氏) 越えるべき壁は高そうだが、ファンを勇気づけるデータもあると同氏は言う。 「高低の話が出ましたが、大谷は真ん中に滅法強いのです。内側から順に.407、.472、.361と物凄い数字を残している。少しでも甘くなったら……と投手は力み、失投も増えるでしょう。インハイのフォーシームを打てる選手はメジャーでも稀。このまま行けばいい。不安があるとすれば盗塁へのこだわりです。40-40は素晴らしいですが、ケガのリスクがある」 ’12年のミゲル・カブレラ(タイガース)以来の三冠王が日本人――そんな夢が手に届くところにある。 『FRIDAY』2024年8月16日号より
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