<春に駆ける’23センバツ専大松戸>第1部・軌跡/上 新チーム、発足直後は散々 自信生んだ逆転勝利 /千葉
「今のプレーだと1点取られるよ!」「ナイスバッティング!」 1月中旬の専大松戸のグラウンドには、野球部員たちの元気な声が飛び交っていた。合間にはポジションごとに集まり、互いに改善点を指摘し合う。自ら考え、高め合う活気に満ちた練習風景。だが、新チームができた当初からこうだったわけではない。 昨年8月の滑り出しは散々だった。発足直後の白鷗大足利(栃木)との練習試合で、大差をつけられてのコールド負けを喫した。強くなりたいという選手たちの意思が感じられず、持丸修一監督があきれて途中で帰ってしまうこともあった。メンバー同士のコミュニケーションは少なく、チーム全体には負の雰囲気が漂っていた。 昨秋の県大会に向けて不安を覚えた大森准弥主将(2年)は同月下旬、2年生を集めてこう言った。「キャプテンや副キャプテンという役割は名前だけだ。2年18人全員で引っ張ろう」。そこから少しずつ声を出す選手が増えていったが、手応えをつかむには勝利の経験が必要だった。 波に乗るきっかけをつかんだのは、県大会3回戦の千葉経大付との一戦だった。先発のマウンドに上がった数井秀雅(1年)が序盤から捕まり、二回に一挙4点を奪われて大量リードを許す苦しい展開となった。チーム内には焦りが漂った。 重苦しいムードを振り払ったのは上迫田優介(2年)だ。直後の三回表。2点差に詰め寄り、なおも2死満塁の場面で高めに入った直球を捉えると、走者一掃の逆転打に。これでチーム全体が勢いに乗り、激しい打ち合いを11―7で制した。大きなビハインドからの逆転勝利は、選手たちに自信をもたらした。 「何をやってもうまくいかない時期があった」。大森主将は苦しかった昨夏を懐かしそうに振り返る。野球は精神面がプレーに大きく影響するスポーツだ。勝利の味を知った今のナインたちに、あの頃の面影はない。 ◇ 専大松戸(松戸市)が3月18日に開幕する選抜高校野球大会への切符をつかんだ。数々の試練を乗り越え、2年ぶり2回目のセンバツ出場を果たしたチームの軌跡を振り返る。(この連載は近森歌音が担当します) ……………………………………………………………………………………………………… ▽県大会3回戦(22年9月23日) 専大松戸 105301001=11 千葉経大付 140002000=7