固定概念を覆すバキュームカー・エルフ! 町を走れば子どもからお年寄りまでの人気者。女子高生からは写メ攻めの嵐!
カスタムCARでは過去にもさまざまな“働くカスタムカー”を取り上げてきたが、今回の取材車両ほどキャッチーかつ世の中の常識や固定観念を覆す衝撃作はいないだろう。モパーグリーン(実はオーナーが大好きなカワサキのライムグリーン!)と、ひと目でアメリ感びんびんのレタリング&ピンストライプが全身に冴え渡る、このいすゞ・エルフのタンク車。まるでホットウィールのミニカーの実車版“働くホットロッドCOE”風のいでたちがオチャメでCOOLだが、巻き取り式のホースリールを背負った後ろのタンクを見て、「まさかコレって……」と正体にお気づきの方も少なくないだろう。 【画像17枚】お気に入りポイントはピンストライプとレタリング!9日間も泊りがけでオールペイント。ホイールはアメリカのアルコア製17.5インチをイン!日本の働くトラックでも人気のブランドだが、バキュームカーに履かせた事例はおそらく国内随一、いや世界で唯一かもしれない。センターにはブラストで「ArtCraft」の文字が踊る そう、そのまさか。実はこのエルフは正真正銘の衛生車、俗にいうバキュームカーだ。水洗トイレや下水道が整備された現在ではバキュームカーを町中で目にする機会は少なくなったが、人々の日常生活を支える裏方の働き者として、今なおなくてはならない存在。その担い手であるエルフのオーナーが、和歌山県紀の川市で「桃山清掃」を営むオーナーだ。 長年従事してきた業務に誇りを持つ氏が抱いてきたのは「バキュームカーに対する世の中のネガティブイメージを払拭したい!」という想い。現代のバキュームカーは衛生化&無臭化の技術革新が進んでいるものの、昭和の大昔からの「汚い・臭い」の固定観念が根強く残っているのは否めないトコロ。プライベートで数々のアメ車を乗り継いできたUSカスタムフリークでもあるオーナーだけに、社用車の代替を機にイメージアップ大作戦のごとく好感度バツグンのアメカジなバキュームカー製作を決意したのが、今から7年前のこと。モリタのポンプを架装したNMRハイキャブの2011年型エルフによる新車ベースでのプロジェクトが始動したのであった。 ポップな緑のキャビン&タンク同色のボディカラーは新車購入時の別注によるもので、セブンティーズ クライスラーのマッスルカーを意識したもの。かといって色替え程度でこんなにカッコよく化けるハズもなく、USカスタム系ワーキングトラックを手本としたリア回りのディテールアップが個性の土台となっているのだ。 ボディデザインを中心としたカスタムプロデュースは、オーナーと旧知の仲である「長谷川自動車」が担当。そのコンセプトワークを手作業でカタチにしたのが、名工「アートクラフト」であった。その入魂の作がサイド&テール回りのエアロパネルやリアフェンダー。しかも各部のエッジに丸みを付け、かつリアフェンダーを境にパネル前後に傾斜をつけるという恐ろしく手の込んだメタルワークが注がれているのが特筆。デコトラやアートトラックでは鉄板ワンオフのボディ部品は角張ったプレスが当たり前だけに、その演出そのものが常識破りの匠ワザなのだ。足元にはアルコアのアルミをセットし、タンクの脱臭機やホース先端にクロームメッキを施すといった細部のコスメアップも抜かりナシ。そして仕上げの最終章はピンストライパー「KEN THE FLATTOP」を招聘して行った全身ドローイングアート。即興のアドリブセンスのもと、POPカジュアルなアメリカ臭ムンムンのビジュアルに見事な転身を得たのでアリマス。 汲み取りや浄化槽の衛生業務でバリバリ働き、町を走れば子どもからお年寄りまでの人気者。女子高生からは写メ攻めの嵐!そんな「誰からも好かれるバキュームカー」の存在は、まさに世界随一のカスタムビューティで間違いナシだ! 初出:カスタムCAR 2021年6月号 Vol.512 (記事中の内容は掲載当時のものを主とし、一部加筆したものです)
カスタムCAR編集部