ICTの活用が子どもの成績に影響…脳科学者・茂木健一郎「ICTを使うことは前頭葉をアクティブに使うことにつながる」

TOKYO MX（地上波9ch）朝の報道・情報生番組「堀潤モーニングFLAG」（毎週月～金曜6:59～）。「FLAG NEWS」のコーナーでは、今春行なわれた全国学力テストでの驚きの結果について取り上げました。 ◆ICTを活用している学校ほどテストの正答率が高い 小学6年生と中学3年生を対象に今年4月に行われた今年度の学力テストの結果が公表。記述式で出題された中学3年生の国語と数学、小学6年生の算数の正答率が最も低く、自らの考えを表現する力に課題が見られました。 文部科学省によると、全国平均正答率は中学3年生が国語58.4％、算数53.0％。小学6年生は国語67.8％、算数63.6％。 一方、学校に対するアンケート結果によると、授業で考えをまとめて発表する際、積極的にICT情報通信技術を利用している学校ほど各教科の正答率が高い傾向となりました。 この結果を受け、脳科学者で理学博士の茂木健一郎さんは「脳科学の立場から言うと、いわゆるICT（Information and Communication Technology：情報通信技術）のテクノロジーを使うことは、前頭葉をアクティブに使うことにつながる」とICTと前頭葉の関係性を示唆。 紙の本よりも電子機器のほうがよりアクティブに前頭葉を使うそうで、「ひょっとしたらそういうことが（テストの結果に）関わっているのかもしれない」と推察しつつ、「いずれにせよ学力テストの点数云々関係なく、国全体としてICTのリテラシーを上げていく必要がある」と声を大にします。 ◆ICTが活用できない背景には日本の教育の根本的な問題が… キャスターの堀潤は先日、スーパーサイエンスハイスクール（SSH）で先生と話をした際、その方は縦割り行政が教育面にも影響を及ぼしていると指摘していたそうで、「教育現場をサポートしようと国もいろいろ補助金を出しているが、経産省のプログラムを採用するなら文科省のものは受けられない、そういった現状がある」と行政の弊害を明かします。 関西大学特任教授の深澤真紀さんは、堀の発言に大きく頷き、その上で「ICTは確かに大事だが、なぜ学力テストの点数が下がっているかといえば、教員が多忙ということがある。ICTを導入するとなるとそのための準備も必要になるが、（教員に）その時間がない」と兼ねてから言われる日本の教育の根本的な問題点を指摘。 さらに、「日本は教員のやる仕事が多すぎる。他国は職員がプロフェッショナルで、それこそ入試から何からいろいろなことに携わるが、日本はむしろそれらをどんどん教員にやらせようとしている。（世界と）逆行しているので、まずは教員が教育とICTに時間を取れるようにしなければいけない」と切望。 そして深澤さんは、まずやるべきこととして学校職員数の増員を挙げ、「海外ではICT専用の職員がいたりする。彼らが電子機器のチェックまでやるが、日本では教員が全てやっている」と熱弁します。 一方、教育実習経験のあるアーティビストの黒部睦さんは、現場でもICTを活用している先生はいるものの、その多くは非常勤であり、なおかつひとつの科目に特化していると言います。また、「そういう先生がいる学校は資金的な面などで余裕があるからこそできる」と言い、“ICT情報通信技術を利用している学校ほど各教科の正答率が高い”という学力テストの結果もそこに起因しているのではないかと推察。 また、一方で「非常勤であれば教員になりたいという人はたくさんいると思う。本当は教えたいという人の受け皿を増やしたり、それをアピールしていくことが私たち世代にとっては希望になると思う」とも。 ここまでの話を聞き、堀は「理系の教科が国の教育水準の上下を判別しているが、こういう時代においては音楽や表現などもっとクリエイティブなものが教育として高い位置に評価されるような変化を求める声もある」と知見を語ります。 これに、深澤さんからは「そういう意味では日本の教育は良い面もある」との声が。というのも、体育や音楽、美術に家庭科など多種多様な科目を公教育で学べる国はそう多くないから。 続いて茂木さんからは「子どもたちがどう感じているのかを聞いてみたい。学力テストのスコアも大事だが、子どもたちの学びの楽しさなどを大人の押し付けではなく、子どもに聞くという姿勢は大事だと思う」といった声のほか、黒部さんからは「（子どもたちは）学校を卒業してからいろいろ気づく。（学校に）いる間はテストで良い点を取るというのが当たり前すぎて（他のことに）気付けない」との意見もありました。