「なぜこんな船を選んだのか書いていない」…JR九州高速船の浸水隠し、調査報告書を「低評価」
不祥事を起こした企業の第三者委員会の報告書を評価する「第三者委員会報告書格付け委員会」(委員長・久保利英明弁護士、9人)は27日、「JR九州高速船」(福岡市)のクイーンビートルが浸水を隠し3か月以上運航を続けた問題の調査報告書の検証結果を発表した。A~Fの5段階評価(Eはなし)で、2人が不合格の「F」、残り7人は「D」とし、「総じて低い評価だった」とした。船導入の経営判断が解明されていない、などの批判も多かった。 【写真】<今昔]>日韓高速船「ビートル2世」1991年に就航
格付け委は、ガバナンス(企業統治)や法令順守などに詳しい有志の弁護士らが、企業の第三者委の報告書から検証が必要と判断したものについて、格付けしてきた。今回は交通機関で影響が大きいなどとして、JR九州高速船の親会社・JR九州が設置した第三者委の報告書を格付けした。
委員4人は27日、東京都内で記者会見した。久保利委員長は「一番大事なのは、なぜこんな船を選んだのかだが、報告書に書いていない。60億円もかけて誰が選んだのか」と指摘。「アルミでダメージに弱く、溶接が難しい船だったわけだが、正しい事実認識と合理的な判断がなされていたのか、(報告書が)『経営判断だから』とタッチしないのは、報告書として意味があるのだろうか」と述べた。
海事関係に詳しい野村修也・中央大法科大学院教授は「(以前運航していた)水面から浮くジェットフォイルから、(アルミで)リスクの高い高速船にする時には、それなりの調査研究、経営判断があってしかるべきだが、(報告書からは)何が行われていたのかわからない」と話した。
また、ガバナンスに詳しい八田進二・青山学院大名誉教授は「代用船のない1隻態勢で運航してきた根本的な原因について、会社の裁量の中での経営判断事項として調査対象にしていないが、この点こそが真因究明の根本」と指摘し、「第三者委の独立性に疑問が残る」とした。
一方、JR九州の第三者委の委員長を務めた尾崎恒康弁護士は格付け委の検証結果について「コメントは差し控える」とし、JR九州は「第三者委の報告書を真摯(しんし)に受け止め今後につなげていく」とした。