「建設業の2025年問題」迫る危機 大工職人の高齢化と人手不足が招く未来
■「学び」と「働く」を両立する新たな学校教育
こうした状況に事業者サイドは、ただ手をこまねいているだけではない。兵庫県神戸市で工務店を経営する高橋剛志社長は、2023年4月、社会課題となっている職人不足の根本解決を目指し、通信制高校と職業訓練校を掛け合わせた「マイスター高等学院」を開校した。同校は、生徒が授業のカリキュラムとして、大工見習いとして働き、高校卒業と専門技能の習得を両立できるという、これまでにない独自の教育プログラムを確立している。 具体的には、生徒は週4日を提携する工務店で大工の見習いとして過ごし、実際の現場で家を建てたり、リフォームの作業を手伝ったりすることで、実践的な技術を習得する。残りの1日は、提携先の学校で一般的な高校の授業を受け、卒業に必要な単位を取得する仕組みだ。 高校生としてOTJで教わる大工見習い期間中は時給が支払われるため、働きながら学費を稼ぐことも可能だ。卒業後には、提携する全国の住宅会社に正社員として就業する道も用意されている。 同校代表の高橋氏は、大工を育成していくという取り組みだけでなく、「非行や不登校などで行き場を失い、学歴社会という壁にぶつかった子などに光を当てることで、将来のキャリア形成が困難になるという社会的な問題を解決したい」と述べる。 同校の教育プログラムを導入する提携の通信制高校は、近畿地方を中心に20校まで拡大、今後は全国への普及拡大を目指している。現在は大工職人に限らず、深刻な人手不足が危惧される製造業や介護福祉、林業にも裾野を広げている。