<甲子園交流試合・2020センバツ32校>鶴岡東5-3日本航空石川 鶴岡東 変則左腕、自在に 背番号「18」緩急散らし
◇第5日(16日・阪神甲子園球場) 鶴岡東が逃げ切った。2点を追う三回、吉田の2点適時打で同点。五回に相手投手の暴投で勝ち越した。先発の阿部は制球よく7三振を奪って7回3失点と好投。日本航空石川は二回までに2点リードしたが、三回以降は好機を逸して追加点を挙げられず、九回2死満塁で迎えたサヨナラ機にも、あと1本が出なかった。 【真夏の熱闘】交流試合の写真特集はこちら <鶴岡東5―3日本航空石川> 投球モーションに入った途端、背番号の「18」が空を向くほど背中をかがめ、体の横から一気に左腕を振り抜く。鶴岡東の先発左腕・阿部は、左横手という珍しいフォームなうえに、昨秋の公式戦で登板がない。手玉に取られた日本航空石川の主将・井口は「まさか(の登板)だった」と驚きを隠せなかった。 制球難を克服しようと、1年秋に上手から改めた変則投法が威力を発揮した。打者から見えにくいリリースポイントが、130キロにも満たない直球を一層速く見せた。さらに緩いスライダーとのコンビネーションで打者を翻弄(ほんろう)。時折、上手から投じる90キロ台のスローカーブも効果的だった。 二回に自らの悪送球で3点目を失い、なおも無死二、三塁のピンチを背負ったが、1番・井口から続く左打者3人をスライダーで三振、三邪飛、三振に仕留めた。いずれも打者がボールを迎えにいき、右肩が開いた力感のないスイング。2番の天羽は「直球に合わせて打点を前にしたが、タイミングがつかめなかった」と嘆いた。 「慣れてきた」という三回以降は緩急自在に球をコーナーに散らし、7回3失点。八回からはエース番号を付けた右腕・太田が救援し、逃げ切った。 継投が必勝パターンの鶴岡東。「複数の投手を使うことでチームが活性化する」という佐藤監督が目指すのは、エースだけに依存しないチームだ。「一番頑張っていて、調子が良かった」選手を先発に起用し、阿部も「うれしかった」と意気に感じてしっかり試合を作る。高校野球の見本となる戦いぶりを、甲子園で示した。【石川裕士】 ◇航空石川、成長の好救援 別世界追い一翼担う 六回の登板前、日本航空石川の先発・嘉手苅から「粘ってくれ。後はお前に託した」と声を掛けられ、田中は意気に感じた。かつて嘉手苅のことを「(野球をしている)世界が違う」と思っていたからだ。 先頭の小林を外角低めの142キロの直球で見逃し三振に仕留めるなど外角中心の配球で打たせて取り、4回1失点。勝てなかったが「一番いい投球ができた」と満足げだった。 入学時、球速は130キロにも届かなかった。一方、嘉手苅は大型右腕として1年春から試合で投げていた。嘉手苅のいるAチームがグラウンドで練習する時、田中がいるBチームは雨天練習場やラグビー場。「あまり話す機会がなかった」と遠い存在だった。それでも背中を追い、クイック投法などでフォームを矯正すると、昨秋には球速が143キロに到達。嘉手苅がけがで投げられない中、北信越大会でチームを準優勝に導いた。 今夏は復活したライバルに背番号「1」を取られた。でも、そこまで悔しくはない。嘉手苅から厚い信頼を置かれ、周囲からは「ダブルエース」と呼ばれるまでの存在に成長できたからだ。甲子園という最高の舞台で、日本航空石川の二つの翼が羽ばたいた。【安田光高】 ……………………………………………………………………………………………………… △午後3時24分 鶴岡東(山形) 102010010=5 210000000=3 日本航空石川(石川)