深夜の除夜の鐘にクレーム、静岡県の大澤寺は除夕の鐘で2016年締めくくり
近隣住民のクレームから除夜の鐘を昼間についている寺として、ネットなどで話題になっている静岡県牧之原市の大澤寺(だいたくじ)。2016年も大晦日の午後12時から鐘つきをスタート。除夜の鐘ならぬ除夕(じょせき)の鐘で1年を締めくくり新たな年を迎えた。
大澤寺は静岡県西部、相良海岸沿いの人家が立ち並ぶのどかな地域に構える由緒あるお寺。住職の今井一光さん(58)の話によると、同寺の鐘は昭和18年に軍に供出され、長く鐘楼に鐘がなかったが、檀家がお金を出しあって昭和30年に復活。以来、除夜の鐘をついていた。しかし、12~13年前に、深夜に鐘をつくことにクレームが出たことから大晦日に鐘をつかなくなったという。 檀家の思いがこもった鐘を大晦日につかないのは申し訳ないと、父親を継いで住職になった今井一光さんが復活を検討。檀家とも相談し、2年前より近隣に配慮して深夜ではなく昼間に鐘をつくようになった。このことが伝えられると除夜の鐘に対するクレームの賛否を含めてネットで話題となり、大澤寺は大晦日の昼間に鐘をつくお寺としてすっかり有名に。
2016年も12月31日午後12時より除夕の鐘をスタート。澄みきった冬の青空の下に鐘の音が響き渡った。境内には、地域住民にとどまらず、近隣からも大勢の人が鐘をつきに訪れ、鐘楼の前には長い列が出来た。甘酒やとん汁なども振る舞われ、境内は終始和やかな雰囲気に包まれていた。 小さな子供を連れて家族で訪れた男性は、「静岡市から来ました。子供を連れて除夜の鐘には行けないので有り難い。いい経験をさせてもらった」と話していた。「昼間であれば苦情が出ることもない。鐘を作った檀家の思いもかなえられる」と今井住職。除夕の鐘はすっかり地域の行事として根付いているようだ。