69歳ひとり暮らし、八ヶ岳の一軒家で年金月3万円の生活とは?「森に暮らして30年。手作りと物々交換が基本」
◆もらいものと拾いもので贅沢に 料理に使う塩や豆など最低限のものは生協で注文して、それ以外はもらったり拾ったり摘んできたりでまかないます。たとえばお米は、自分で作っている友人の田植えや稲刈りを手伝って、格安で分けてもらうんです。玄米に小豆を入れて炊いたりして工夫しています。 森で一人暮らしを続けるには健康が第一だと思い、たくさん取り入れるようにしているのは、発酵食品。とくに麹は万能ね。味噌や甘酒はもちろん、小豆を入れて甘い発酵小豆を作るとおいしいですよ。 キャベツを発酵させて作るザワークラウトも絶品。豆乳にザワークラウトを加えて放置すれば、固形になって何日も食べられる豆乳ヨーグルト(もどき)も作れます。納豆も自家製です。茹でた大豆を藁に入れてホームベーカリーの発酵機能を使うと、放っておくだけでできるの。 パンを焼く時の小麦は、脱穀した後の小麦を知人からお安く分けていただきます。ひき臼でグリグリひくのが楽しくて好きなんです。そこに、干しブドウと水と砂糖を加えて瓶に入れて、時々クチュクチュ振って作った天然酵母を入れる。 パン生地にお寺の境内で拾ったカヤの実や姫くるみを入れたりして、薪ストーブでカンパーニュを焼いています。
お酢がほしい時は、熟した柿のヘタをとった実を小さく切って瓶に詰めておけば、柿酢ができる。このあたりには「あまんど」と呼ばれる実の小さな柿があるのですが、お寺になったのをいただける時はそれを潰して、染色に使う柿渋が作れるんです。同じ食材にもいろいろな使い道があって楽しい! 柿渋は、小麦粉をひくひき臼ではなく餅臼で作りますが、これは最近知り合いに譲ってもらいました。こういう生活を周囲が知ってくれているからか、調理器具ももらいものが多いんです。今度はお餅も作ってみようかなと思います。 たくあんを漬ける桶は、私が「山のばあちゃん師匠」と呼んで慕っている地元の方からいただきました。彼女は「私が生きている間は、いろんなこと教えてやるから」と言って、お世話してくださるんです。師匠のたくあんは絶品で、秘訣は漬ける時にナスの葉を加えることだそう。 ミカンの皮は七味唐辛子にも使われているでしょう。だから乾かして調味料にしています。玉ねぎの皮は染色にも使うし、野菜は捨てるところがないのよ。 もらいものが多いけど、物々交換でお返しもしています。だから、お金はそんなにかからない。唯一の贅沢は果物です。健康のために食べているけれど、果物を買わなければ、1ヵ月の食費は1万5000円以内でおさまるんだけどな。 (構成=篠藤ゆり、撮影=藤澤靖子)
ウリウリばあちゃん
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