就任4戦目で初勝利をつかんだガンバ大阪・宮本恒靖監督の采配力とは?
「J3の試合やトップチームの紅白戦を春先から見ていて、一美はJ1の選手相手にも十分できるのではないかと思っていました。ウィジョが抜けたなかで、FC東京のセンターバック2人を相手にしたときにフィジカルが強く、ボールを収めることができて、ファーストディフェンダーとしてチームのために献身的に働いてくれる姿勢を求めて、チャンスをつかんでほしいという思いで送り出しました。落ち着いてやっていたと思いますし、ゴールに迫る場面もあったので、今後も期待したいと思います」 J3に参戦しているガンバ大阪U-23を昨シーズンから1年半指揮してきたなかで、宮本監督はボランチで高卒ルーキーだった高宇洋(こう・たかひろ=市立船橋)と高江麗央(東福岡)を、FWでは一美を我慢して起用。まさに手塩に掛けながら、ときには厳しい姿勢で接して育ててきた。 高と高江はハードワークを厭わず、球際の強さでも頭抜けていた。181cm、77kgの一美はフィジカルの強さを最前線で発揮するファイター型。ごく近い将来、ガンバのトップチームに欠かせない存在になると信じて、勝利と育成の両面が求められるU-23チームの主軸に据えた。 迎えた先月23日。成績不振に伴いクルピ前監督が解任され、火中の栗を拾う形で、今シーズンからトップチームのコーチも兼任していた宮本監督が誕生する。真っ先に手がけた仕事が、J3が中断期間に入ったことに伴い、オフを与えていた3人を大阪へ呼び戻すことだった。 宮本監督就任後の4試合で、高はボランチとしてすべて先発フル出場。高江もジュビロ戦で38歳のレジェンド遠藤保仁に代わって先発して高とコンビを組み、出場機会こそ訪れなかったものの、一美もベンチからトップチームの戦いを見つめてきた。 「外から見ていてもどかしい気持ちもあったし、試合に出たらこうしてやる、という気持ちもあった。得点することはできませんでしたが、自分のいいところは出せたと思います。ウィジョがいなくなるのでチャンスだと思っていましたし、いつスタメンが来ても、という心の準備はできていました」 デビュー戦をこう振り返った一美は後半36分までプレーし、FC東京が誇る屈強なセンターバック、元日本代表の森重真人と韓国代表としてワールドカップ・ロシア大会にも出場したチャン・ヒョンスと肉弾戦を展開。結果として2人の体力を削ぎ落した。 後半27分から投入された高江は、J3を戦いながらあうんのコンビネーションを築いてきた高とダブルボランチを形成。前線に配置された遠藤を守備面でフォローし、パスセンスを含めた攻撃力をフル稼働させる状況を整えた。 そして、歓喜の決勝ゴールを巻き戻してみると、アデミウソンへ縦パスを入れたのは高であり、高へ横パスを配給したのはカウンターから右サイドを全力で駆け上がっていた高江だった。