ついにスズ子に訪れた、ラスボス・村山トミとの対決の日…「たった二言の凄み」の裏側に迫る【ブギウギ】
12月22日に放送された『ブギウギ』第60話で、スズ子(趣里)とトミ(小雪)の「対決」シーンが、緊張感たっぷりに展開された。息子であり演芸業界最大手・村山興業の跡取りの愛助と、人気歌手であるスズ子の交際に賛成できないトミは、2人の前でこう言う。 【写真】トミと向かい合うスズ子と愛助 「あんたはんのことはよう存じております。ええ歌を歌いなはる。USKの下積みで苦労もしてはるやろうし、ように分別のあるお人や思います。愛助は村山興業の跡継ぎになる人間だす。そのことを重々、ご理解ください」 歌手としてのスズ子に一目置いていることを明かしたうえで、静かに言葉少なに圧をかけるテクニックは、さすが業界最大手の村山興業を担うやり手の女性社長といったところ。特に最後の二言の迫力が圧倒的だった。 「ほなら話は終わりだす。あとはよう2人で話しなはれ」 このトミの言葉を「ぼんぼん」の愛助は「僕らに任せてくれはったんかな」と受け取り、スズ子は「ちゃうわ、きっぱり別れろいうことや」と、トミの真意を理解した。2人の「解釈のズレ」に、愛助の「青さ」と、スズ子の「分別」が書き表されていて面白い。このシーンの成り立ちについて、制作統括の福岡利武さんに聞いた。 ■「このシーンの台詞の引き算は見事だと思った」 福岡さんは、足立紳さんによるこのシーンの脚本について、「足立さんが書く脚本は台詞が多い印象がありますが、このシーンの台詞の引き算は見事だと思いました。トミが2人の交際に反対するところの描写は非常に難しく、かなり苦労されたと思います」と語る。 また、言葉少なに語って去るトミの迫力については、「あの台詞はスズ子に向かって言っているんですよね。『スズ子にはそれで伝わるだろう』と。『歌手としての実績は認めているし、苦労も、人柄もわかる』と理解を示し、最低限のことだけ言って、『あとはよう2人で話しなはれ』と出ていく。愛助は別に怒られた気にはなっていなくて、『あれ? 認めてくれたのかな?』と思ってしまうし、スズ子は身が引き締まって震えるという。絶妙な脚本だなと思いましたし、小雪さんの存在感とお芝居がしっかりと乗って、スズ子もさぞ怖かっただろう思います(笑)」と振りかえった。 この窮地を、スズ子と愛助は「愛の力」で乗り越えられるのだろうか。舞台は今、昭和19年の暮れ。戦況はますます厳しくなり、さらに60話のラストシーンでは愛助が吐血してしまった。来週13週の週タイトルは「今がいっちゃん幸せや」となっているが、この先の2人の運命やいかに・・・。 取材・文/佐野華英