「理系が超苦手」でも天文台に就職 進路選びで大切なこと
やりたいことを諦めない
「星の子館」では、一般向けの天体観望会や工作イベント、子ども向け天文クラブの運営を担当しました。「目をキラキラさせて星を見ている子どもたちの姿や豊かな想像力にいつも元気をもらっていました」という谷さんですが、嘱託職員の任期は最長3年。再び将来を考え始めた頃に、今度は姫路科学館(姫路市立)に勤務していた高知県出身の職員の方に声をかけられました。「高知県にある『ホテル星羅四万十』に併設された天文台がリニューアルするから、運営をやってみないか」 谷さんは、経験が浅い自分に務まるのかと不安もありましたが、正規職員として天文台で仕事ができるチャンスだと思い、高知県へ行くことを決めました。 谷さんは現在、「ホテル星羅四万十」の正社員として、昼間はホテル業務の仕事をし、夜はホテルに隣接する敷地内の「四万十天文台」で実施する天体観望会で誘導や案内の仕事をしています。そのほかに近隣小学校での課外授業や、広報用の天体写真の撮影、環境省主催で実施される夜空の明るさ調査などにも協力しています。「利用者との距離が近いので、皆さんの様子をじかに感じることができ、大きなやりがいになっています。皆さんに西土佐の美しい星空を堪能していただき、高知での楽しい旅の思い出をつくるお手伝いをしたいです」 春には第1子の出産を控えています。「やりたいことを諦めずに努力してきて本当によかったです。育児休暇が明けたら仕事に戻りたい。現在の夢は、高知県を星空保護区にすることです」と言います。 谷さんは、いま高校生に向けて、「将来、自分が何をしたいかを大切にすることが一番大事です。高校での勉強以外にも、興味のある分野のイベントに参加したり、同じ分野に興味を持つ同年代の人たちと交流したりするなど、できるだけ多くの経験をして、後悔のない高校生活を送ってほしい」と伝えたいそうです。 京都産業大学の神山天文台のほかにも、天文台を持つ大学があります。東京大学大学院理学系研究科附属天文学教育研究センターの三鷹本部には、学生実習用の30センチ光学望遠鏡などがあり、口径105センチのシュミット望遠鏡などを備える木曽観測所では、学内だけでなく、国内外の天文学者による研究活動が行われています。また、宇都宮大学共同教育学部の天文台には、大型望遠鏡が設置されています。天文学に興味のある人は、大学に設置された天文施設などを調べてみるといいでしょう。
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