「理系が超苦手」でも天文台に就職 進路選びで大切なこと
何度も質問して理解
実際に高2から理系クラスに進むと、いくら予習・復習をしても、計算や理解をするのに他の生徒より倍くらいの時間がかかりました。「周りはみんな数学と理科が得意な人ばかり。不安にならなかったと言えば嘘になります。特に微分積分が本当に難しく、数Ⅲ・Cは、もう自分の限界なのではと何度も思いました」。物理の点数も伸び悩み、先生に相談のうえ、高校3年の1学期にセンター試験(共通テストの前身)の選択科目を物理から地学へ変更して受験しようと決めました。「私の高校には地学が選択教科になかったので、先生に何度も質問しながら独学で勉強しました」 「3年になって受験が迫ってくると、これでよかったのかという迷いに何度も襲われました」という谷さん。それでも諦めず解説を読んで理解し、繰り返し問題を解くうちに、数学と理科の基本問題では確実に点数を取れる力がついていきました。3年の秋には、センター試験の準備を進めながら、第1志望の京都産業大学のAO入試に挑戦し、見事合格しました。オープンキャンパスで新しい天文台ができると聞いて、行きたいと願っていた大学でした。
天文台への就職は狭き門
大学入学後は、1、2年で力学や線形代数、量子力学などを学び、3年の天文学の授業では実際に天体を観測、4年から天文学のゼミに入ります。「大学でも微分積分や線形代数には苦戦しましたが、物理や数学、宇宙の授業など、幅広く学ぶことができました。授業もとても楽しかったです」。卒業論文に向けて、ほうき星の観測に関する研究を進めました。 2009年12月、京都産業大学内に神山天文台が完成。大学3年だった谷さんは、天文台イベントの学生スタッフとして採用されました。 「一般の方向けに星の解説をしていると、天文に関わる道には、研究だけではなく、星と人を結ぶ仕事もあることがわかってきて、将来の仕事として志すようになりました」 ただ、天文台の仕事は募集がかなり少なく、新卒で就職するのは難しいのが現実です。ところが、そんなときに幸運にも、高校1年の夏に国立天文台三鷹キャンパスでの「君が天文学者になる4日間」のイベントで知り合った人が、「天文台を備えた姫路市宿泊型児童館 『星の子館』で嘱託職員の空きが出るから働かないか」と声をかけてくれたのです。谷さんは募集に手を挙げ、新卒での就職が決まりました。 「人と人との絆の大切さを実感しました。天文台での就職は非常に競争が激しいので、専門的なスキルだけでなく、業界内での人脈を築くことも重要です」