日産の下請けいじめの「深い闇」…いばらの道でも系列メーカーが模索すべき「自主独立の道」
日産の下請けイジメ
「勧告されたにもかかわらず、是正されていないのならば、極めて遺憾だ。法令遵守の観点のみならず、経済界を挙げて進めている価格転嫁にも水を差す」--。 【写真】韓国・文在寅の「引退後の姿」がヤバすぎる…! 官僚出身で物静かな語り口が特徴の経済産業大臣、斎藤健氏が先週金曜日(5月17日)の記者会見で、吠えた。日産自動車が相変わらず下請けいじめをしているとの報道への感想を求められて、いら立ちを隠せなかったのだ。 日産を非難したのは、斎藤大臣だけではない。5月14日には、経済同友会の新浪剛史・代表幹事が記者会見で、「経営陣として「知らなかった」では済まされない」と切り捨てた。自民党の伊藤達也・中小企業政策調査会長も同日、「買い叩きが事実だとすれば、トップの責任が問われる」と、日産の内田誠・社長兼最高経営責任者(CEO)の進退を問う構えまで見せた。 自動車メーカーの下請けいじめは、筆者が新米新聞記者だった1980年代から絶えることなく、その存在が囁かれ続けてきた問題だ。とはいえ、公正取引委員会が今年3月に、下請法(下請代金支払遅延等防止法)違反として改善勧告をした時点で、ゲームのルールは変わったはずである。それにもかかわらず、日産が是正できなかったとすれば、この問題は、日産の構造に根差す深い闇なのかもしれない。 まず、おさらいだ。この問題の発端となった今年3月7日の公正取引委員会の勧告は、日産が自社のコストの圧縮を狙い、2021年1月から2023年4月までの間、正当な理由がないにもかかわらず、部品代を一方的に値下げさせていたと断じたものだ。値引かせた金額は、総額で30億2367万6843円。値引かされた事業者は36名(社)に及んだという。 公正取引委員会が調査に乗り出したからだろう。日産は、今年1月末付で前述の支払い削減額を支払った。 しかし、今後は、下請事業者の責めに帰すべき理由がないのに、下請代金を減らすことを禁じるとし、経営者を中心に社内の遵法管理体制の整備を急ぐよう勧告したのである。また、そのために講じた措置を公正取引委員会に速やかに報告することも義務付けた。 あわせて、自動車業界では近年、本件と類似の違反行為が生じており、公正取引委員会が勧告を行っていると明かしたうえで、改めて業界団体に啓発活動を行うよう促していた。 自動車業界の類似行為も、日を開けずに明らかになった。日産への勧告から8日後の3月15日、公正取引委員会は、「独占禁止法上の『優越的地位の乱用』に係るコスト上昇分の価格転嫁円滑化に関する調査の結果を踏まえた事業者名の公表について」と題する資料を公表。 この中で、労務費、原材料価格、エネルギーコストなどの上昇分の取引価格への反映の必要性について、価格の交渉の場において明示的に協議することなく、従来どおりに取引価格を据え置く問題を犯していたとして、10社の社名を公の下にさらす処分をした。その10社の中に、京セラや西濃運輸のほか、自動車メーカーのダイハツ工業と三菱ふそうトラック・バスの2社も含まれていたのだ。公正取引委員会は、下請けいじめが日産1社だけの問題ではなく、自動車業界にまん延している問題だと指摘した。 話を日産への勧告に戻すと、違法な値引きを強要していた時期が2021年1月からの2年3カ月前だったことは、日産が下請けいじめに走った動機を伺わせる。