齊藤 工×栗林和明 日本発巨大IPを狙え! グローバルヒットへの挑戦
映画館で上映するからこそ守れるものがある
「ハリウッドのインディーズ映画を中心に、俳優が初期から能動的に企画に参加する映画づくりが進んでいます。その良いエッセンスを取り入れつつ、新しい映画のつくり方を模索していきたいです」(齊藤) 近年は日本人でも、俳優の賀来賢人が主演と共同エグゼクティブ・プロデューサーを務めたNetflixの日本ドラマシリーズ『忍びの家 House of Ninjas』(24年)や、真田広之が主演・プロデュースしたハリウッド発の時代劇ドラマ『SHOGUN』(24年)など、俳優が初期から製作陣として参加し、企画段階から世界に届けることを見据えた映像作品が増えている。カンヌ国際映画祭では、齊藤自身が携わる作品も含めて、日本のそうした良い変化を世界にアピールできる機会にもなったという。 齊藤は、今冬に公開予定の『大きな家』(竹林亮監督)の企画・プロデュースも務めている。かねて親交があった児童養護施設に暮らす子どもたちに密着し、家族ではないつながりのなかで生活しながら、自分の運命と向き合い成長していく子どもたちの等身大の姿を描いたドキュメンタリー映画だ。 齊藤が本作を企画したきっかけは、栗林が企画・プロデュースしたドキュメンタリー映画『14歳の栞』(竹林亮監督)を鑑賞したことだった。とある中学校で3学期を過ごす1クラス35人の生徒全員に密着した本作は、21年3月の公開以来、毎年春に再上映され3回目となった今年に、観客動員数最多(年間)を記録した。本作は、鑑賞者に対して、未成年である生徒たちのプライバシー侵害やSNSでの誹謗中傷をしないよう「お願い」を記載したプリントを配布。現状はソフト化やオンライン配信なども予定していない。配慮のある上映形態は新鮮だった。 「映画館で上映するからこそ守れるものがあるんだ、ということに気づかされました。竹林監督のチームならば、子どもたちを守りつつ、児童養護施設での生態系や、見ようとして目をそむけてきた現状を感じてもらえる。“どんな作品をつくってきたか”ではなく“どう届けていくか”が主体になる時代になってきているんだと感じています」(齊藤)