まるで「ねずみ講」ではないか…日本の社会保障制度がはらむ、極めて深刻かつ根本的な問題【経済学者が解説】
現行の年金財政が採用している賦課方式は、現時点の現役世代が拠出した保険料が、高齢世代への給付の財源として、そのまま横流しされる仕組みだ。増え続ける高齢世代の給付を工面し続けることは、制度の破綻を意味する。問題点に迫る。※本連載は島澤諭氏の著書『教養としての財政問題』(ウェッジ)より一部を抜粋・再編集したものです。 年金に頼らず「夫婦で65~80歳まで生きる」ための貯蓄額一覧
人口とねずみ講
みなさんは、ねずみ講を知っているだろう。 ねずみ講は、ピラミッド型の組織をしている。まず、ピラミッドの頂点にいる「親」が二人の「子」会員を勧誘して一定額の金銭を得る。次に、「子」会員がそれぞれ二人の「孫」会員を勧誘するなど、さらにあとから加入した会員が先に加入した会員に金銭を支払う組織である。要するに、次から次へと下の世代を集められるならば、つまり、世代の人口が成長しつつ、その連鎖が続く限り、全員が儲けられる仕組みなのである。 しかし、もし、自分が最後の会員だということになれば、誰からもお金を受け取れないので、当然、その者はねずみ講には加入しない。つまり、ねずみ講が永続するには、会員が無限に増え続けなければならないし、無限に増え続けるという予想が大事だ。しかし、人口は有限だ。だから、ねずみ講はいつか必ず破綻する。世代の連鎖が無限に続かない限り絶対にねずみ講は成立しない。 日本では、1978年に制定された無限連鎖講の防止に関する法律で、政府がねずみ講を禁止している。法律で明確に禁止されているにもかかわらず、ねずみ講に類した仕掛けは後を絶たず、マルチ商法やネットワークビジネスの中にもねずみ講と認定される事例が相次いでいる。 日本の例ではないが、1997年1月にアルバニアでは、ねずみ講の破綻を発端として無政府状態に陥り、イタリア軍を主力とする多国籍軍が治安回復に努力し、多国籍軍の監視下で、6月に総選挙が実施され、ねずみ講を黙認したペリシャ政権は敗北。ねずみ講による損失の補償を訴えた社会党が政権に復活する事態も生じた。なんとねずみ講が一国の政権を吹き飛ばしたのだ。