顧客と仲介業者がグルになって数千万円を要求...頻発する「新手の詐欺」で不動産会社が上げる悲鳴
「うちの会社は投資用のマンションを扱っているんですが、’16年の8月に『A』という仲介業者と仕事をするようになりました。しかし、’17年の1月頃にAから紹介された顧客から、『契約にあたってあなたの会社が私の個人情報を改ざんした』と、まったく心当たりのない言いがかりをつけられたんです」 【写真をみる】「あっ!」もしかして……近くに潜んでいるかもしれない「13人の重要指名手配犯たち」 そう語るのは、都内の大手不動産会社の役員を務める山田氏(仮名)だ。その裏には、仲介したAと顧客が結託し、山田氏に仕掛けた“詐欺疑惑”があるという。山田氏が続ける。 「この顧客に’17年の3月頃、投資用のワンルームマンションを紹介しました。その顧客は実は、自身の収入の額を偽り、さらに借金があることを隠蔽していたんです。しかし、うちが契約欲しさに『適切な購入者であるように仕立てあげるため』に、個人情報の改ざんと隠蔽をやったと主張して、契約の解除と600万円の賠償金を求めてきました。顧客側は賠償金をせしめることでカネを得ようとしたようですが、うちはもちろんそのような改ざんは行っていません。 クレームの内容があまりにも不可解だったので当該の顧客について調査したところ、その顧客を仲介してくれたAと元不動産業者であるBという人物がグルになって顧客に指示を出していたことがわかりました。顧客から送られてきた書類には、賠償に応じなければ警察やマスコミ各社に相談するといった記述もあり、ほとんど脅迫のようでした」 つまり、今回の件のスキームはこうだ。顧客は仲介業者とグルになって自身の収入額を偽り、借金についても隠ぺいした虚偽の書類を提出して契約を結ぶ。しかしその後、「自分は正しい情報を提示したのに、山田氏の会社が契約を結びたいがために、個人情報を一方的に改ざんした。これは違法な契約にあたる」と言いがかりをつけ、多額の賠償金を要求してきたのだ。 山田氏の企業が改ざんについて否定しても、その顧客は強気の姿勢で賠償金を求め続けてきたという。しかし、山田氏側が法的措置を匂わせたところ、態度が一変する。 山田氏が続ける。 「仲介業者のAが、突然顧客の個人情報の改ざんは自分が行ったこと、それによってうちの会社を欺こうとしていたと認める『自認書』という書類を提出してきました。つまり、うちはまったく事実ではない疑惑をかけられたうえ、巨額の賠償金を要求されていたんです」 日々この案件の対応に追われ、当時は憔悴していたという山田氏。疑惑も晴れ、無事に解決したかにみえたが――。 「今度は別の顧客から、まったく同じ手口で契約の解除と賠償金を要求する連絡がきたんです。すでに大阪の不動産業者が顧客に指示を出しているとわかっています。しかも今回は、2000万円という多額の賠償金を要求されているんです。 私も含め、会社の人間は対応にあたらなければならず疲弊しています。これは私の推測ですが、不動産業者をターゲットにした新手の詐欺グループのような存在が生まれているのではないでしょうか。うち以外にも、同じような被害に遭っている会社がいると思います」 顧客の収入額を偽ったことや借金を隠蔽して契約したこと、それによって山田氏の勤務する会社に契約解除と賠償金を要求したことについて、仲介業者の『A』に質問状を送付したところ、山田氏の会社に「顧客を紹介したことは間違いありません」としたうえで、以下のように回答があった。 「(顧客の情報に関する)書類を改ざんとのことですが、当時弊社担当者が顧客から貰った時点で改ざんされていたのか、弊社担当者が改ざんしたのか、現在調査中です」 また、仲介した顧客と結託して契約の解除や賠償金を要求していることについては、「弊社は一切関与しておりません」と否定した。 終始疲労を滲ませながら本誌の取材に応じた山田氏。スキーム化された新手の詐欺によって、不動産業者は悲鳴を上げ続けている。
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