大失速の浅田真央 フィギュア団体戦がもたらした影響
団体戦で女子FPに出て、女子シングルSPで8位発進となった鈴木明子は、団体戦が終わったとき、「ピークを作るのは難しかったけど、ここで滑ることができたことをプラスにしていきたい」と話していた。現時点で、団体にも出たカロリーナ・コストナー(イタリア)やグレイシー・ゴールド(米国)は、しっかりと上位に入っており、団体に出れば必ず演技が低調になる、というわけではない。ただ、ミスの出た選手が目立つのは事実であり、また、ミスのあるないにかかわらず、イコールコンディションでない、ということも事実である。 そもそもなぜ、フィギュアは団体が先で個人戦が後なのか。小林部長によると、「日程などに関しては、我々には決まったことが通達されるだけで、なぜそうなっているのかなどは分からない」とのこと。ただ、スケートの中でも、スピードスケートやショートトラックは後半戦にリレーがあるため、バランスを取るために前半にしたのではないか、ということも考えられるそうだ。そのうえで、小林部長は「本音では個人戦の後がありがたい。そうすればいろいろな問題が解消される」と話す。 冬季五輪でフィギュアスケートはドル箱だ。チケットは完売があたりまえ、しかも、値段も高額で、日本向け(外国向け)のチケットは3万円、5万円、7万円、9万円という高い設定でも売れる。しかし、団体戦の影響でシングルのパフォーマンスが低下するなら、本末転倒だ。五輪は最高のパフォーマンスで争われるべき場所。だからこそ、見る人々を感動させることができるのである。これではフィギュアの団体戦が「収益を増やすためにやみくもにつくった新種目」と言われてしまいかねない。 団体戦には「フィギュア王国ランキング争い」という魅力があり、それ自体は否定されるものではない。しかし、団体戦が行われている他種目を見ると、ジャンプもノルディック複合も団体は個人の後。夏季五輪に目を移せば、体操は団体が先で個人戦が後だが、卓球にせよ、水泳にせよ、陸上にせよ、団体戦やリレーは個人種目の後に日程が組まれている。 選手は最高のパフォーマンスを見せたい。観客は最高のパフォーマンスを見たい。五輪の面白みの原点ともいえる部分を大切にしたいなら、フィギュア団体戦の日程はすみやかに再考されるべき。議論必至である。 (文責・矢内由美子/スポーツライター).