中国軍機、初の領空侵犯なぜ──元空将「日本の反応を試す可能性も」 中国機へのスクランブル、年479回【#みんなのギモン】
■領空侵犯の恐れがある場合、自衛隊は?
斎藤佑樹キャスター 「そもそも領空に侵入するというのは、どういうことなんですか?」 近野解説委員 「領空という範囲がどこなのか、おさらいします。領土の上空と、領海つまり海岸線から約22.2キロの範囲の上空を合わせたものです。領空の内側を許可なく自由に航行することは、国際法上認められていません」 「飛行プランが出されていない航空機が領空侵犯する恐れがある場合、航空自衛隊が戦闘機などを緊急発進させ、近寄らないよう通告します。それでも領空侵犯が発生した場合には、退去するように警告を発します」
■空自戦闘機の緊急発進、昨年度は?
河出奈都美アナウンサー 「緊急発進はどのくらい行われているんでしょうか?」 近野解説委員 「防衛省によると昨年度、航空自衛隊の戦闘機が行った緊急発進は669回でした。毎日1回以上はどこかで緊急発進している計算になります。ただ、これでも過去10年では最も少なかったそうです」 「内訳を見ると、中国機に対するものが479回と最も多く、全体の約7割を占めています。続いてロシアが174回、北朝鮮が2回です」 鈴江アナウンサー 「これだけ日常的に緊急発進が行われているということを私たちはなかなか感じにくいですが、こういった中で『主権を守っていますよ』、『入ってきたら大変なことになりますよ』と、外に対しても発信していく上ではこういった活動はとても重要ですよね」 近野解説委員 「重要なことになります。中国には実際、どんな狙いがあるのでしょうか? 木原防衛大臣は27日の会見で、中国軍機の行動の意図や目的について『現時点で確たることを答えることは困難』と述べ、分析を進めるとしています」
■元空将に聞く…考えられる可能性
近野解説委員 「専門家はどうでしょうか。麗沢大学の特別教授で元空将の織田邦男さんによると、可能性は2つ考えられるそうです。1つは偶発的なミスで、もう1つは意図的に少し領空に入り、日本の反応を試すというものです。後者を真剣に受け止めないといけないということです」 「今回領空侵犯があった空域の周辺には、自衛隊のレーダーサイトがあります。中国軍がそういった自衛隊側の情報を取るために偵察機を飛行させているのは日常で、これ自体は当たり前の活動といいます。この近くには、海上自衛隊の訓練海域もあるということです」 「ただ織田さんによると、もしパイロットのミスだとすると、領空から退去後すぐに中国側に帰るのが自然だと考えられます。ただ今回は相当に強い警告を受けているはずなのに、領空を出た後も周辺で長く旋回しているため、わざとなのではと疑ってしまうといいます」 森アナウンサー 「航路を見てみてもそうですし、中国が東南アジアで威圧行為を強めていることも考えると、どうしても意図的に入った可能性を疑ってしまうのも仕方ないかなと思います」 「さらに織田さんは、今後中国のこうした行動が繰り返され、徐々にエスカレートしていくことは警戒しなければいけないとしています」