「どやさ!」今くるよさん、9年前死去の相方いくよさん命日と1日違い 中川家・礼二のモノマネでも認知
女性コンビ「今いくよ・くるよ」で活躍した漫才師の今くるよ(本名・酒井スエ子=さかい・すえこ)さんが27日、膵(すい)がんのため大阪市内の病院で死去した。所属する吉本興業が28日、発表した。年齢非公表としていたが、76歳だった。細身の相方・いくよさん(2015年5月28日死去、享年67)と対照的にぽっちゃりした体形で、容姿のイジり合いと明るい笑いで人気に。京都弁で繰り出す「どやさ!」は名物ギャグとなった。逝去発表のこの日は偶然にも、いくよさんの命日だった。 昨年12月に死去した“アホの坂田”こと坂田利夫さん(享年82)に続き、上方演芸界を明るく照らした人気者が天国に旅立った。関係者によると、くるよさんは一昨年に転倒して大たい骨を骨折。その治療の過程で膵がんが発覚した。 大阪府内の福祉施設に入所したが、大阪・なんばグランド花月(NGK)の舞台で心筋梗塞(こうそく)を起こした09年から心臓にペースメーカーを入れていたことなどもあり、徐々に衰弱。ここ数年は会話も難しくなりつつあったという。 生涯独身で両親、兄弟も他界しており、長年担当してきたマネジャーが最期をみとったという。 くるよさんが最後に公の場に姿を見せたのは22年4月、NGKで開催された吉本興業の110周年記念興行「伝説の一日」。車いすに乗っての出演だった。ヤクザの姉貴分の役柄ながら笑顔を絶やさず、声色は弱々しかったが「皆さんご一緒に!」と両手を交互に前に出すジェスチャーのギャグ「どやさ!」を連発。劇場の空気を一瞬で温め、全盛期を思わせた。 1970年から、高校時代の同級生・いくよさんとコンビで活躍。結成から10年間は芽が出なかったが、濃いまつ毛と化粧で細身のいくよさんをイジり、逆に太めのくるよさんが両腕を出したド派手な色彩のノースリーブの服装を「そんなとこから足、出して…」とツッコまれるやり取りがウケて、80年代の漫才ブームに乗ってブレイク。通称“いくくる”として、女性漫才師の先頭ランナーとして全国的に名を売った。 明るいルックスで、腹をポンとたたくギャグも人気だったが、地元・京都弁を生かした「どやさ!」は代名詞に。「中川家」の弟・礼二(52)のモノマネで拡散し、若い世代にも認知された。 15年にいくよさんが胃がんで死去後はピン芸人として活動した。しかし、関係者によると、45年間も連れ添った盟友を失ったことによる落胆はやはり大きかったという。次第に外出などもおっくうがるようになって5年ほど前から車いす生活となり、仕事もセーブしていた。9年前に亡くなったいくよさんの命日とは、わずか1日違い。私生活でも長く同居するなど、まるでおしどり夫婦のような関係だった相方の元へ、静かに旅立った。 ◆今くるよさん葬儀日程 ▼喪主 非公表 ▼通夜 30日午後7時 ▼葬儀・告別式 31日午後1時 ▼会場 いずれも「公益社 天神橋会館」(大阪市北区天神橋4の6の42) ◆今 くるよ(いま・くるよ)本名・酒井スエ子。1947年6月17日、京都市生まれ。OL経験を経て、70年、高校の同級生で同じソフトボール部だった今いくよさんとともに、島田洋之介さん(85年死去)との夫婦漫才で活躍した今喜多代さん(11年死去)に弟子入りし、漫才師デビュー。81年に「上方お笑い大賞」の金賞、84年には同大賞を受賞した。昨年、関西演芸界の発展・振興に貢献したとして、コンビで上方演芸の殿堂入りを果たした。 ◆膵(すい)がん 膵臓は胃の後ろ側に位置する約20センチの細長い臓器。国立がん研究センターのホームページなどによると、一般的な膵がんは、膵液の流れる「膵管」から発生したものが大多数を占める。食欲不振や腹痛、腰・背中の痛み、黄だんなどが主な症状として挙げられるが、初期には無症状のことが多いため、早期発見は難しい。膵臓の周囲には腹部の主要な血管や神経が隣接しているため手術が困難で、難治がんのひとつとされてきたが、近年は手術の安全性向上や有効な抗がん剤の登場などにより生存率も上がってきている。
報知新聞社