入札不調の新たな総合体育館 不調の背景と今後の計画は? 他県の事例も検証 鹿児島
鹿児島テレビ
鹿児島県が整備を予定している新たな総合体育館についてです。 整備地は鹿児島市のドルフィンポート跡地に決まったものの、工事業者が決まらず計画は暗礁に乗り上げています。 その理由はどこにあるのか? そして県の新たな体育館はどうなるのか? 他県の公共施設の事例をひもとき、今後の可能性を探ります。 塩田知事 「こうした結果になって残念に思う」 2024年9月、報道陣に悔しさをにじませた塩田知事。 新たな総合体育館の工事業者が決まらず、入札が不調に終わったからでした。 現在の県体育館の老朽化、そして全国規模の大会を誘致できる施設の必要性。 県の体育館計画が持ち上がって、もう10年以上の月日が流れました。 歴代知事のもとで整備地が二転三転するなか、塩田知事が出した答えは、鹿児島市のドルフィンポート跡地でした。 整備地が決まり計画は進むかと思われましたが、またしても体育館計画は立ち往生します。 工事事業者の選定です。 体育館の建設について、県が選んだのはPFIと呼ばれる手法。 設計から運営まで民間事業者のノウハウを生かすことで、コストを削減することが狙いでした。 しかし9月に、入札に参加する意向を示していた、2つの事業者グループから辞退届が出されたのです。 近年の物価上昇に、熊本の半導体工場建設による工事費の高騰。 県は体育館の整備費を245億円から313億円にまで引き上げたものの、事業者にとっては「割に合わない」ものだったのです。 塩田知事 「色々なコストが高騰しているということですから、そういった(増額の)可能性を含めて、様々なヒアリングをしてみたい」 ”事業者選び”という新たな暗礁に乗り上げた体育館計画。 全国でも公共施設の入札不調が相次ぐ中、県と同じPFI手法で公共施設の建設を進める事例が長崎市にあります。 「よろしくお願いします」 長崎市 学校給食センター整備室・松尾光憲室長 「長崎市にとって財政的にもメリットがあるという判断から、PFI手法を用いて、給食センターの整備を行っている」 施設の老朽化などを理由に市内60の給食施設を集約し、北部、中部、南部に3つの給食センターを整備することにした長崎市。 しかし、2023年4月の締め切りまでに、南部給食センターの入札には事業者からの応募がありませんでした。 理由は県の体育館と同様のものでした。 松尾光憲室長 「建築資材や労務単価が高騰していることから、市が提示をしていた提案の上限額に収まらなかった」 入札が不調になった後、考えられる主な対策は3つ。 規模や機能の縮小、整備手法の見直し。 そして、整備費の増額です。 長崎市では規模の縮小や整備手法について検討を行いましたがー 松尾光憲室長 「必要な調理能力を小さくすることはできない。コスト削減できるので、PFI手法を変えられない」 残された道は整備費の増額でした。 当初は59億円あまりだった整備費を、2023年7月、約67億円に増額。 2つの事業者グループが入札に参加し、ようやく事業者が決まりました。 松尾光憲室長 「価格の見直しにあたっては、直近の建築費指数に置き換えた。さらに募集を開始してから提案書を締め切るまでの(地価の)伸び率も勘案した。なかなかそこ(物価上昇)まで見込んで上限額を設定することが当時は難しかった」 入札不調を受け、増額という選択をした長崎市。 では県の体育館に、3つの選択肢をあてはめるとどうなるのか? 塩田知事は新体育館の規模や機能は、全国大会が開催できる必要最小限として「見直しは難しい」としています。 PFIでは資金調達も民間事業者が行いますが、12月議会の開会日に塩田知事は事業者からこんな意見がでていることを明らかにしました。 塩田知事 「『金利が上昇した影響で負担が増えている』などの意見を聞いている」 そんな中、県は自ら資金調達を行う手法も検討していて、こうすることで事業者の負担を減らせる可能性があるということです。 加速する物価高騰に事業者からはこんな意見も。 「8月上旬までは入札可能と考えていたものの、設備工事費の高騰により入札が難しくなった」 物価上昇のスピードに民間事業者でさえ追いつけない実情が垣間見えます。 県が設定した313億円という額と、事業者側の見積もりの差についてある関係者は。 「『100億円以上離れている』と聞いている」 こうした状況を受けてか、3日の県議会で、塩田知事は増額の可能性に言及しました。 塩田知事 「今般の建設コストの高騰などを踏まえると、事業費が増加する可能性があると考えている」 事業者選びで再び暗礁に乗り上げた体育館計画。 整備手法の見直しでコストを抑えるのか。 長崎と同じく増額に至るのか。 限れられた選択肢の中で、県が今後どのような道筋を示すか注目です。
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