京都府

　京都哲学研究所が来年秋の開催を発表した第1回「京都会議」には、財界のトップや世界的な哲学者らの参加が予定されている。AI（人工知能）時代の哲学の創造に向け、定期的に国際会議を開いていく計画で、地元では新たな「知的対話の場」の誕生を歓迎する声があがっている。

　研究所は2023年7月、NTTが京大の出口康夫教授（哲学）とともに設立した。研究所の共同代表理事を務めるNTTの澤田純会長は設立の狙いについて、急速に発達するAIを念頭に「新技術の登場は、社会に革新と同時にネガティブな影響を与える側面もある。多様な価値観を共存させる長期的な視野に立った思想が必要で、情報産業の企業としても行動を起こす必要があると考えた」と語る。もう一人の共同代表理事である出口氏も「技術開発で社会は便利になったが、それだけでは取りこぼされる価値が山ほどある」と話し、京都会議では「価値多層社会」をキーワードに議論や対話を深めたいとしている。

　会議は来年9月23、24日の2日間、京都市左京区の国立京都国際会館で開かれ、ドイツの哲学者マルクス・ガブリエル氏による講演やパネルディスカッションなどが予定されている。政官界や文化・芸術界、宗教界などにも幅広く参加を呼び掛ける考えで、延べ1000人の来場者を見込んでいる。今年7月に清水寺で開かれた京都会議の準備会合には、西脇知事、松井孝治京都市長、京大の湊長博学長、同寺の森清顕執事らが出席し、「この地で会議が開催されることは意義深く、日本人の心根や生き方も世界に発信したい」（西脇知事）などと理解を示す発言が相次いだ。

　第1回会議の参加者に名を連ねる森執事は開催発表を受け、「『他者のおかげさんで社会が成り立っている』という概念がこれからの世界の指針になるのではないか。哲学の言葉を通して人々が再認識する機会になってほしい」と話した。