日曜劇場「海に眠るダイヤモンド」が“超名作になる予感”。戦後と現代日本を重ねる重厚な物語
そして、端島の鉄平はリナへ、東京のいづみは玲央へ「ここから変えたくないか」と、時代を超えて同じ言葉を放つ。 いまの日本は、そしていまの生活は、このままでいいのか。変えたいと思わないのか。 端島で行動しようとする若者の姿から、いまを生きる現代人へそんなメッセージを投げかけた。 ■数々の名作を生み出してきたトリオ 脚本は、社会問題をエンターテインメントに昇華させて現代社会に切り込む社会派ヒューマンドラマの名手・野木亜紀子氏によるオリジナルのもの。監督は塚原あゆ子氏、プロデューサーは新井順子氏と、ヒット作を連発するTBS最強トリオによる作品になる。
3人による近作には、ドラマ『アンナチュラル』(2018年)、『MIU404』(2020年)、そして今年の映画『ラストマイル』があり、社会問題を世の中へ提起する切り口が鋭くなってきていたが、今作はさらに一歩踏み込んでいるように感じる。 第1話から、日本のエンターテインメントシーンのトップを走る脚本家のひとりである野木亜紀子節の脚本の切れ味に圧倒された。ただ、本作には、第1話にはまだ示されていないメッセージが仕込まれているはずだ。
前作ドラマ『MIU404』の“404”は、警視庁機動捜査隊(MIU)の捜査員である主人公のコールサインだが、同時にWebブラウザでインターネットのページが見つからないときの表示「404 not found」のエラーコードの意図もあり、答えが見つからない社会問題を描くことを示していた。 ■1955年と2018年の意味 本作でのそれは、ふつうに考えれば、1955年の海底より深い地の底の石炭と、2018年に生きる人々の心の奥底に眠る希望をダイヤモンドとして、それぞれにとっての大事なものを掘り起こす姿を描くのだろう。
しかし、それだけではなく、1955年と2018年の時代にも別の意味があるのかもしれない。 1955年は自民党が結成され、日本戦後の政治体制が生まれた年でもある。一方、2018年は平成最後の1年であり、新たな社会がはじまる前夜でもあった。両方に共通する“ダイヤモンド”を意味する何かがあるのか。それはこれから徐々に明かされていくだろう。 この先、毎週の放送後にSNSやネットニュースがにぎやかになっていきそうだ。今期No.1の話題作であり、注目作であることが第1話から示された本作。名作になる予感があふれるなか、この先のストーリーが早くも気になっている視聴者は多いことだろう。
武井 保之 :ライター