「撮り鉄」と共存、鉄道会社や住民歩み寄り マナー講習や会員制撮影会 集客には課題も
鉄道写真を撮るため私有地に立ち入るなど、一部の「撮り鉄」による迷惑行為を防ごうと、鉄道会社や地域住民がルールを守らせる取り組みが本格化している。一律に排除はせず融和的な姿勢でトラブルを防ぎ、鉄道を楽しんでもらえるよう共存を図っているのが最近の特徴だ。 ■撮影後の加工で理想の写真 相模鉄道とソフトウェア会社のアドビは今月24日、鉄道写真に映りこんだ樹木などを、生成人工知能(AI)を使って画像から取り除く編集技術の講習会を開く。10日まで参加者を募集している。理想的な写真を求める撮り鉄が、樹木を切ったり看板を動かしたり迷惑行為をせず、楽しく撮影する方法を提案する。 相鉄沿線でも新型車両の導入時などに、撮り鉄による迷惑行為が住民から報告されている。相鉄では安全に鉄道撮影を楽しめる方法を模索していたといい、当日は参加者向けの臨時列車も用意。広報担当者は「今回のイベントを、撮影時の迷惑行為について考える契機にしてもらいたい」と説明する。 ■撮り鉄相手のビジネスも 地域住民が撮り鉄を受け入れる姿勢を示し、話題を呼んだ事例もある。今年6月、JR特急「やくも」(岡山―出雲市)で、国鉄時代から運行していた「381系」が引退。沿線の鳥取県日野町には約1年前から多くの撮り鉄が訪れるようになった。一部が無断駐車などの問題を起こしていたが、住民は逆に駐車場用に土地を提供するなど融和的に臨んだ。 声かけでマナー啓発をしながら、地元飲食店のパンフレットを配るなど集客も実施。コミュニケーションをとる中でルール違反は減り、鳥取県交通政策課では「ラストランの頃には撮り鉄と地元で良い関係が築けていた」と説明する。 撮り鉄相手のビジネスが成立するかも今後の注目だ。JR東日本子会社のJR東日本スタートアップ(東京都港区)は2021年11月、会員制サービスの「撮り鉄コミュニティ」を開始した。会員には限定の撮影会イベントのほか、撮った写真が公式ポスターに採用されるなどの特典もあった。 無料会員は700人以上。有料会員は一時200人程度に達したが想定よりは伸び悩み、今年7月にサービスを終了している。広報担当者は「会員数が増えてはいかず、『熱量』の高い方が毎回やって来ていた。撮り鉄のマーケットを見直さなくてはという議論をしている」と明かす。そのうえで「本当に楽しみたい方が、気持ちよく撮り鉄ができるようにしたい。一律に『迷惑行為』でくくられないよう、引き続き取り組みたい」としている。(織田淳嗣)