個人投資家、欧州不動産ファンドから1年で100億ユーロ引き揚げ
(ブルームバーグ): 物件の評価額の低下が不動産ファンドの流動性を圧迫するとの警告の中で、個人投資家は4月までの1年間にユーロ建て不動産ファンドから102億ユーロ(約1兆7300億円)を引き揚げた。
モーニングスターがまとめたデータによると、前の1年間にはこのファンドに20億ユーロ近い資金が流入していた。オープンエンド型および上場不動産投資信託の純資産総額は先月1630億ユーロを下回り、2019年8月以来の低水準となった。
このデータの発表の数日前に、欧州中央銀行(ECB)は商業用不動産価格の下落が不動産投資ファンドに難題をもたらす可能性があると警告していた。ECBは金融安定報告の中で、評価額の低下が十分に織り込まれていない可能性があると指摘。このため償還請求が急増した場合、ファンドの手元資金にストレスがかかる可能性がある。
その場合、ファンドは資産売却を迫られる恐れがある。このようなシナリオは、投資家の資金引き上げが急増し、英国の多くの不動産ファンドが取引を停止し資産を迅速に売却しなければならなかった欧州連合(EU)離脱国民投票後の再来となる。
現在、不動産ファンド運用会社は投資家への資金返還で、通常よりかなり長い通知期間を要求している。
報告書の中でECBはまた、特にオフィスに対する需要が減少しているため、商業用不動産価格がさらに下落する可能性があるとも指摘した。このセクターで損失が増加し始めると、一部の金融機関の資産の質に影響を与える可能性があると付け加えた。
原題:Investors Pull €10 Billion in a Year From Europe Property Funds(抜粋)
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Loukia Gyftopoulou