アベノミクスめぐり国会でも論戦 トリクルダウンって何? いちのせかつみの生活経済
例えば、新たに創設された「結婚・子育て資金贈与税非課税」を検証すると、この制度は、平成27年4月~平成31年3月までに親や祖父母から、子どもや孫(20歳以上50歳未満)へ、結婚や子育て資金に充てるために金融機関に信託した場合は、1000万円(うち結婚資金は300万円)まで非課税となるものです。 孫のために結婚や子育ての資金を贈与する祖父母は、非課税で財産を生前贈与できるため、相続税の節税につなげることができます。本来、孫または子どもがこれらの資金をコツコツ貯蓄して準備しなくてはいけないところ、長期にわたる景気の低迷で収入が激減し、預金金利も最低の水準のため貯蓄することが難しい状況です。そこでお金持ち世代である祖父母に資金の提供を受けることで孫や子どもはそのための資金の準備をすることなく、消費に費やすことが可能となります。 住宅取得資金や教育資金の贈与の非課税も同様に高齢者世代のお金持ちを優遇し、次世代のために財産を贈与することで、消費意欲を拡大し、景気を回復させることができれば最終的には貧困層までも景気の恩恵が受けることができるということです。 安倍首相はトリクルダウンについて「我々が行っている政策とは違う」と強調しましたが、アベノミクスはお金をあるところからないところへ流すトリクルダウンの特徴を活用した政策といえます。重要なことは、一部のお金持ちや大企業だけが優遇されるのではなく、景気回復によって国民全体が潤い、収入や財産の格差がなくなるように舵をとれるかが大きな課題でしょう。 景気回復の鍵を握るお金持ちは果たして、お金を使うことができるのでしょうか? (文責 いちのせかつみ) ■いちのせかつみ ファイナンシャル・プランナー、生活経済ジャーナリスト。平成6年にCFP(R)資格を取得。家計からみた人生設計の考え方に関しては第一人者。レギュラー・コメンテーターとして、毎日放送、朝日放送などのテレビやラジオに出演する一方、講演会やセミナー、執筆活動など多方面で活躍中。