「オフィスではすっぴん」が普通のパリジェンヌたちが化粧をする時とは? 南沢奈央が感嘆した“ありのまま”の姿
休み時間、OLたちがお手洗いで化粧直ししながら噂話。いわゆる日本のオフィスドラマのワンシーンの定番だが、パリではそんな光景は見ることができない。なぜなら、みんな社内ではすっぴんだからだ。 日本では知らず知らずのあいだに、「すっぴんは失礼」という感覚が植え付けられている。国が変われば常識も変わるものだが、パリジェンヌの「毎日顔を合わせる同僚の前で気張ってどうすんのよ」とはごもっとも。〈オフィスで女らしさを演出する必要はない〉という考え方は、女性はもちろんのこと、世の男性にも広がればいいなと思う。 ではパリジェンヌはどういうときにメイクをするかというと、デートやイベントなど“ここぞ”というとき。このオンオフの切り替えは見事である。きっとこれは、オンかオフかは自分で決めるという姿勢だから成り立つことだ。 人の意見よりも、自分の意思を尊重する。やはり、そこに戻ってくる。でも、「自分らしさ」同様、自分の意思がよく見えないときもある。そういうときはまず、したくないことを考えてそれをしない、というところから始めればいいのかもしれない。無理していることがあったら、それをやめてみる。手が回らないなら外注するという、パリジェンヌの育児スタイルを知ってそう思った。 自分にとって、何が一番心地よいのか。それを見つけ、実行していけば、おのずと「自分らしさ」につながっていくのだ。 パリジェンヌの爽快な生き方を例に、万国共通、自分を大切にするヒントがたくさん詰まっている一冊。そんな本書からも、フランス人向けに日本を紹介する著書を出していることからもわかるように、著者がパリジェンヌに憧れ、感化されながらも、日本人であること、その感性や価値観に誇りをもっていることが、とても素敵なのである。 かつて「ありのままでいいのよ」と言われた著者が、今度は本を通じてそう伝えてくれた。多くの女性が奮い立たされるはずだ。
新潮社