どうする? 村田諒太! ブラント側「再戦可能性リアルにある」と発言
ブラントのプロモーターが日本での再戦に言及
村田が、進退について煮え切らない発言に終始するのも仕方のない側面があり、なにしろ、いくらブラントにパンチがないとはいえ、ミドル級の1262発ものパンチに生身の体をさらしたのだ。ボロボロに傷つき、満足に歩けないほどのダメージを負った体で「さあ! 次!」という気持ちになれないのも理解できる。 だが、幸いなことに再起への舞台はある。 ブラントのプロモーターのグレッグ・コーエンが、この日、「村田との再戦の可能性はリアルにある」と発言した。米の専門メディア「ボクシング・シーン・ドットコム」が報じたもの。記事によるとコーエン氏は、「ボブ・アラム氏(帝拳の共同プロモーターのトップランク社のCEO)と試合前に再試合について同意している。指名試合ではないが、彼らが再試合を望むなら、我々はベリーハッピーだ」と断言。 その場合、再戦は日本に行って行う用意があり、陣営としては、サウル“カネロ”アルバレス(メキシコ)やゴロフキンといったミドル級のトップファイターとの試合よりも村田戦を優先したいという。また村田サイドが再戦を行うかどうかを決定するまでに30日間の猶予があることも明らかにされた。 ブラント側には「ボクシングスタイル的にブラントは村田に合う。再戦しても同じ結果になると予想する」との自信と日本行きでビッグマネーを手にしたいとの公算があり、試合前から契約にあった再戦に乗り気なのだろう。 この日、そのことを聞かれた村田は、「その情報は今初めて聞いた。(進退結論に)期限がどうこうはないが、30日間なら会長と話をする時間がある。十分な時間だと思う」と、その30日の期限内に再起か、引退かの結論を出す考えであることを口にした。 ブラントとの防衛戦で村田は、必殺の右ストレートを封じこまれ、鉄壁のガードを崩され、第2のパンチとも言えるボディまでマークされ0-3の判定で完敗した。 確かにブラントは村田の不得意とするファイトスタイル。加えて徹底的に研究されて後塵を拝した。村田は言い訳をしなかったが、「調整力も含めて実力」という言葉に集約されるようにいつもの村田ではなかった。調整に失敗していた。下半身が不安定だったため後ろ重心となり、ガードで反応できず、右ストレートに体重も乗らなかった。前傾姿勢を保てないためプレスをかけることもできず挑戦者のスタミナも削れなかった。 戦略で敗れ、自分に負けた。それがボクシングといえば、それまでだが、ボクサーとしてブラントに劣っていたわけではない。コンディションが万全で、試合中に対応さえできれば再戦でブラントに勝つ可能性は高いだろう。 無冠となった32歳の村田が、今さら他団体のベルトを一から狙うには、もう時間はない。陣営にも膨大なエネルギーが必要になってくる。村田がモチベーションを維持することも難しい。だが、すでに契約同意しているブラントとの再戦ならば、村田に戦う理由はある。 しかも日本でできるのだ。 ゴロフキンとの東京ドーム決戦が白紙に戻ったのも運命ならば、2度のアッサン・エンダム(フランス)戦に続き、再びリベンジというテーマでの再戦舞台が整っているのも運命である。 実は“哲学的ボクサー”村田は、心理学者のユングやフロイトが説く、因果論、運命論には懐疑的であり、アドラー的な目的論に傾倒している。つまり過去に行き先を求めるのではなく、今、何を目的に生きるか、今、何ができるか、を考えながら人生を歩むのである。 そういう村田にすれば、運命と結びつけられることを嫌うのかもしれないが、ならば自らの決断で運命を切り開けばいい。日本での再戦なれば、試合中継も「DAZN」から地上波に戻り、中継局に恩義も果たせるのではないか。 いずれにしろ、この試合のダメージからの回復を考慮すると再起にはかなりの時間がかかる。 ただ筆者はこう思う。 もうボクサーとしての時間はそう多く残されていないのだ。自分のために戦えばいい。 立て! 村田! (文責・本郷陽一/論スポ、スポーツタイムズ通信社)