<リベリア・内戦の子供達>ムス(その2) ── 高橋邦典フォト・ジャーナル
一曲聞かせてほしいという僕のリクエストに答えて、ムスはすこし照れながらもリズムをとり始めた。普段聞き慣れた彼女の声より随分高いトーンで、その響きは息を飲むほどに新鮮だった。なんだか僕は、これまで知らなかったムスの一面を見せられた気になった。 「この10年のあいだ、神様がいろんな変化や幸せな時間を与えてくれたわ。人生何がおこっても、それが運命で、受け入れるしかないって思えるようになった。神様がすべて決めたことなの」 ムスが発したこんな言葉に、僕はまた不意をつかれてしまった。やはり、彼女は僕が思っていたよりも、ずっと成長していたのかも知れない。ムスはもう大丈夫だろう、これから何があっても逞しく生きていけるはずだ、そんな気がした。