別府大大学院で公文書管理専門職の資格取得可能に 「アーキビスト」のプログラム新設
別府大大学院(大分県別府市)は本年度、公文書を管理する専門職アーキビストの公的資格を取得できるプログラムを新設した。全国で8大学院しかなく九州では唯一。公文書の保存には歴史の記録や不正防止などの意義があるが、専門の施設や人材は非常に少ない。関係者は「公的資格を持つプロを増やし、必要性への理解を広げたい」と話す。 公的資格「認証アーキビスト」は、民間資格しかなかったアーキビストを専門職として確立するため、国立公文書館(東京)が2020年度に設けた。館内の委員会が審査し、▽古文書の識字力▽歴史的価値の判断力▽デジタル文書の作成・管理力―などを持つ人材として館長が認証する。 別府大大学院では14単位で「准認証アーキビスト」の資格を得られる。3年間の実務経験、調査研究実績の要件も満たせば上級の認証アーキビストになれる。 同大は文学部と大学院で記録史料の保存・活用に関する一貫教育に力を入れてきた。針谷武志教授(62)=アーカイブズ学=は「長年の実績が評価され、資格を取れる大学院に選ばれた」と説明。現在、修士1年生2人がプログラムを受講し、2026年に准アーキビストが誕生する見通しという。 一方、専門職として採用がある官公庁は全国的にごくわずか。県内では保存期限が過ぎた重要な公文書を保存する施設は県公文書館(大分市)だけ。市町村では期限が切れた公文書の大部分は廃棄されているとみられる。 公文書管理の在り方については安倍晋三政権当時、批判が集まった。森友学園への国有地売却を巡り、財務省が決裁文書を改ざん。首相の後援会関係者が多数参加していた桜を見る会の招待者名簿は、野党議員が資料要求をした日にシュレッダーで細断していた。 県内唯一の認証アーキビストで日出町歴史資料館の平井義人館長(69)は、公文書は政策決定のプロセスや事件・事故を後世に伝える「証拠」だという。その時々の担当者の考えや不十分な管理体制で、本来は残されるべき記録が廃棄される危険性を指摘する。 「アーキビストは恣意的な文書廃棄などの歯止め役としてや、コンプライアンス(法令順守)に貢献できる。官民ともに採用を考えてほしい」と求めている。 × × × アーキビストの役割と養成をテーマにした講演会が7日午後1時から、別府大メディアホールで開かれる。国立公文書館アーキビスト認証委員会の高埜利彦委員長(学習院大名誉教授)、針谷教授、平井館長の3人がそれぞれ話す。参加無料。 <メモ> 日本は公文書管理のプロが欧米に比べて少ない。公文書館でも公文書館法に専門職員を置かなくて良いとする付則がある。認証アーキビストは6月1日時点で323人、准認証アーキビストは176人。国立公文書館は2026年度までに合計千人を目指している。