目立つワンマンぶり “トランプ革命”読み解く今後の注目点は
議会・共和党とトランプ氏の距離がカギ
前回記したように、そのためには共和党議会との協調が不可欠だ。民主党が人事から法案審議まで徹底抗戦を続けるなか、ある程度の結束は自ずと可能だろうが、先述したようなワンマン手法が続けば、ホワイトハウス(=行政府)へのチェック機能を担う議会(=立法府)の矜持としても、それに抗うだろう。「反オバマ」という点では結束できても、共和党内にはトランプ大統領を「真正の共和党員」と見なしていない者も多い。上下両院で多数派を死守したものの、共和党は議席を減らしており、トランプ大統領に義理や恩義を感じている議員はほとんどいない。トランプ大統領に対する共和党議員の距離の取り方が今後注目される。
それを探る手がかりは幾つかある。 例えば、2月28日(日本時間3月1日午前)に予定されているトランプ大統領の議会での施政方針演説。民主党議員は総じて冷淡で、このままだとボイコットする者すらいるかもしれないが、共和党議員が演説のどの部分に、どの程度、トランプ大統領にスタンディング・オベーション(立ち上がっての拍手喝采)を送るのか。 あるいは、2月3日に来日したジェームズ・マティス国防長官の動向。広く報じられているように、同氏はトランプ大統領と議会の双方から熱烈な支持を受けている。いわば政権と議会の緩衝材であり橋渡し役だ。その彼とホワイトハウスの間の齟齬が生じることがあれば、議会は政権への不信を強めるだろう。すでにホワイトハウスから送られてくる部下の顔ぶれにマティス国防長官が不満を漏らしているとの噂もある。 連日のようにトランプ大統領の過激な言動が報じられ、私たちもいつの間にか(エンターテイメントのごとく)それを欲している感がある。それをトランプ大統領の「感染力」と捉えるか、「トランプ症候群」と称するかはともかく、日々の言動に振り回されることなく、議会や司法、閣僚や側近を含めたワシントンの政治力学を慎重に読み解いていく必要があろう。
----------------------------- ■渡辺靖(わたなべ・やすし) 1967年生まれ。1997年ハーバード大学より博士号(社会人類学)取得、2005年より現職。主著に『アフター・アメリカ』(慶應義塾大学出版会、サントリー学芸賞受賞)、『アメリカのジレンマ』(NHK出版)、『沈まぬアメリカ』(新潮社)など