目立つワンマンぶり “トランプ革命”読み解く今後の注目点は
危険が潜む司法省長官代行の解任
また、トランプ大統領は大統領令の合憲性に留保を示した司法長官代行を解任したが、司法省の大切な役割の一つは政府の政策判断の合法性を検討・確認する点にある。それゆえ、政権とは一定の距離を保ち、独立性を担保することが不可欠と見なされてきた。今回の対応は米国の民主政を支えてきた不文律を蔑ろにしかねない危険なものだ。 トランプ大統領は「日本が為替操作をしている」とも批判したが、そもそも主要国の指導者が為替介入とも取れる発言をするのは、中央銀行の独立性を踏みにじるものであり、禁じ手とされている。壁建設の費用負担をめぐるメキシコ大統領へのツィッター発言、難民受け入れをめぐるオーストラリア首相との電話会談の顛末等々を伝聞するにつれ、同盟国や友好国に対してもワンマン社長のように振舞っているかのようだ。これも「米国第一主義」を果敢に有言実行していることを示す証左というわけだろうか。
「指先」「口先」だけでは公約実行できない
もっとも、いつまでも「トランプ砲」を打ち続けているわけにもいかない。例えば、メキシコ国境の壁建設には2~4兆円のコストがかかる。さらに不法移民の強制送還には捜査・摘発・拘留・裁判・移送まで膨大なコストがかかる(米国内の不法移民は約1100万人)。米国の労働人口の5%(建設業やレストラン業は10%以上)を占めるとされる不法移民がいなくなれば、人手不足や人件費アップで企業が悲鳴をあげるだろう。壁が出来ても密入国する手段はいくらでもある。財政規律を重んじる共和党議会も慎重にならざるを得ない。 選挙戦から就任演説、そして最初の2週間に発令された大統領令までであれば、 ワシントン(=職業政治家や主要メディア)に反旗を翻し、愚直なまでにポピュリズムと経済ナショナリズムに訴え、支持者向けの「公約実現」を誇示していれば良かったのかもしれない。その過激さと衝撃を「レーガン保守革命」ならぬ「トランプ〇〇革命」と称することも可能だろう(〇〇に何が入るのか、約1年前に「トランプ革命」の可能性について論じた筆者にもいまだに分からないが。 。 しかし、ここからは公約を本当にデリバー(実行)できるのかが問われる。いわば、キャンペーン(選挙戦)モードからガバナンス(統治)モードへの切り替えだ。しばしば「選挙は詩で行うが、統治は散文で行う」と言われるが、これからはスローガンやツィッターだけでは統治できない。