黒田2勝目の裏に新井との友情夢物語
広島の黒田博樹(40)が11日、甲子園で行われた対阪神1回戦に先発。メジャー時代に対戦経験のある福留孝介(38)に同点アーチを浴びるなどしたが、元阪神の新井貴浩(38)の勝ち越しタイムリーなどで大量のリードをもらうと本来の粘り強いピッチングで6回を116球、7安打6奪三振2失点にまとめ2勝目を手にした。広島は3連勝。この黒田の2勝目の裏には、新井と黒田の知られざる友情の夢物語があった。
時の人、黒田以上の大歓声が起きたのが、2回、去年まで7年間、縦ジマのユニホームを着ていた「6番・一塁」の新井が打席に入ったシーンだった。阪神側応援席にも阪神時代のままの新井の応援ボードが並ぶ。FAでチームを去った男ではない。ゴメスが4番に座ることで出番をなくし、年俸を半分に落とされ、事実上の戦力外通告をつけられ古巣に拾われた。そういう経緯がわかっているだけでに虎ファンもブーイングではなく拍手で出迎えた。 「暖かく迎えてもらってうれしかった」 だが、感傷に浸っている余裕はなかった。 1-1の同点で迎えた6回だった。無死一、三塁の勝ち越しのチャンスでメッセンジャーのインサイドのストレートに力負けしなかった。打球はレフトを越える。盟友、黒田への援護弾だった。「クロさんが、粘っていたので、なんとかしたい、走者を返したいと思っていた。インハイのストレートですが、前の打席からタイミングは取れていたんです」。 気持ちで打った。 「ずっとピッチャーが頑張っているのに点を取れずに迷惑をかけていたので」 連敗中は、大瀬良やジョンソンの好投を見殺しにしていた。黒田にも、この2試合、援護らしい援護がなかった。メジャー時代は、巡り合わせが悪く《ムエンゴ》で有名な投手だったが、その再来を広島でも……という危惧はあった。嫌なジンクスは1試合でも早く振り払っておきたい。新井の一振りは、ナインの気持ちを代表するものだった。この回、田中、そして「打者・黒田」にもタイムリーが出て、一気に4点。 「新井? いいところで打ってくれた。よくつないでくれたよ」 黒田も新井の“恩返しの一打”をそう讃えた。 大量援護をもらった黒田は、点差を計算にいれながら組み立てた。6回に、ゴメス、マートン、福留に3連打を浴びて1点を失い、なお一死満塁のピンチを背負ったが、代打の新井良を冷静に、見えていなかった外のスライダーで三振。関本には、148キロのツーシームでセンターフライに押し切った。 「あそこは、ひとつひとつアウトカウントを増やすことだけを考えた」 メジャー時代の対戦成績でも3割を超えて打たれ、相性の悪かった福留には2回に同点アーチ、6回にも2点目のタイムリーと打たれた。ライトへ強く吹いた風に乗ったホームランは、甘いゾーンに入った「フロントドア」だったが、記者に「フロントドアでしたね?」と聞かれると、「フロントドアかどうかは、わからないが、うまく打たれた。フォアボールになるよりも打たれてもいいという感じでいった」とプライドをのぞかせた。この日の6回に116球を要したピッチングは、全体的に「細かいところの出し入れがボールになった。スライダーもよくなかった」と反省含みの総括をした。