黒田2勝目の裏に新井との友情夢物語
黒田と新井。2人には、知られざる友情の夢物語がある。 黒田の広島でのラスト登板となった2007年9月27日のヤクルトでは、新井が「4番・三塁」だった。そのオフ、黒田がメジャーへ、新井が阪神へいずれもFAでチームを離れた。それぞれ理由は違ったが、広島愛にあふれた2人にとって苦渋の決断であったことに違いはなかった。新井は黒田の2歳下だが、新井は、いつも黒田のいじられキャラで、公私において仲良しコンビとして有名だった。お互いに行く道は違えど、オフに黒田が帰国する度にゴルフをして酒を酌み交わし、旧交を温めてきた。 8年ぶりの広島での再会は運命だった。 「今回の僕の広島復帰は、誰にも相談もしませんでしたし、2人で連携していたわけでもなく、本当に偶然なんです。それも縁の深さなんですかね」。新井は、黒田の広島入団が決まると国際電話をかけて「まだ一緒に野球ができますね」と伝えた。 開幕前に新井は、THE PAGEの取材にこんな夢を口にしていた。 「僕はレギュラーを狙う立場。クロさんはメジャーでの耀かしい実績を持った大黒柱としての復帰です。お互いの立場は、全然違うけれど、クロさんが抑えて僕が守って打ってチームが勝てば、それは夢みたいなドラマですよね」 その夢みたいなドラマが、開幕13試合目にして早くも実現したのだ。 だが、これが終わりではない。 黒田は、この日、勝負どころの6回に上本に対して、凱旋復帰後、最速となる152キロのストレートを投じた。「いつ腕が飛んでもいい。大事な場面では、めいっぱい腕を振っている」。壮絶なる40歳の覚悟だ。新井も、また「怪我をしたらしたとき。抑えるなんてことをせずに全力でプレーする」という覚悟を口にしていた。そして「広島で黒田さんと共に最終章を優勝で飾りたい」とも語っていた。 「ビジターでは連敗していたからね。それを止められたのは大きいね」とは、黒田のメジャーリーガーらしい意見。40歳の黒田と38歳の新井。投打のレジェンドコンビの最終章ドラマは、まだ序章に過ぎない。