「三重の事件簿・下」相次ぐ高額詐欺被害 「古典的」オレオレ詐欺も
今年も全国的に相次いだ高額詐欺被害。県内でもSNS(交流サイト)やマッチングアプリを通じて投資などを持ちかけられる「SNS型投資・ロマンス詐欺」の被害が昨年から多発しているが、今年は息子や警察官などを装った「古典的な入り口」(捜査関係者)によるオレオレ詐欺被害が急増した。社会情勢の変化に合わせてさまざまに変わる詐欺の手口。来年も注意が必要だ。 県警によると、先月までに県警が認知したSNS型投資・ロマンス詐欺の被害は281件、約25億3500万円で、被害額、認知件数共に昨年の2倍を超えた。特殊詐欺は316件、約10億2700万円を認知。被害額は昨年から約3億2千万円増加した。 特殊詐欺のうち、オレオレ詐欺の被害は79件、約6億8800万円で、被害額は全体の約3分の2を占める。昨年は特殊詐欺被害の1割にも満たなかったが、今年は息子や警察官などを装った詐欺が相次いだ。 「あなた名義の口座が詐欺に利用された」などの電話は警察官を装う詐欺のよくある手口。「逮捕する」と脅され「お金を確認する」「保釈金が必要」と現金などを要求される。 その後は現金の振り込みを求められることが多い。犯罪グループは大量の口座を用意し、凍結に備えて振込先をたびたび変えるほか、被害金を口座から口座へ移動し、捜査の手が届かないようにしているとみられる。 暗号資産を利用した詐欺も増えている。暗号資産は海外に持ち出すのが容易で、送金先の捜査協力を得るのはハードルが高い。被害者が暗号資産に関する知識が乏しく、知らぬ間にだまし取られていることも多い。 息子を装った詐欺のきっかけは「不倫して女性を妊娠させた」。直前に「携帯電話を洗濯した」「風邪をひいた」との電話も多い。その後、北勢地域や愛知県の駅に呼び出し、付近の路上で「弁護士」などと名乗る「受け子」が現れる。 県警は容疑者の摘発に力を入れる。10月までに、特殊詐欺に関わったとして18人を、SNS型投資・ロマンス詐欺に関わったとして3人を摘発。口座を売却して詐欺を助長したなどとして41人を摘発した。 しかし、摘発の中心は犯罪グループがSNSなどで集めた「使い捨ての存在」(捜査関係者)。逮捕した実行役から指示役を特定する”突き上げ捜査”は難航し、主犯格の摘発には「まだまだ時間がかかる」(同)。 県警生活安全企画課の担当者は「(犯罪グループは)来年以降も手口を次々に変えてくるだろう」とした上で「最終的にはお金を要求される。お金の話が出たら詐欺を疑って警察や家族に相談してほしい」と注意を呼びかけている。