嵐・大野智さん「虚偽情報」騒動、事務所は法的措置検討も… 弁護士が「現状の制度は抑止力が全く足りていない」と指摘するワケ
拡散した側の責任は…?
SNSでの名誉毀損が問題となる場合、そうした内容を投稿した人間だけでなく、拡散をした人も責任を問われることがある。 ただ、その場合も、違法性の有無や、責任の重さは内容や文脈によって変わるという。 杉山弁護士は「そもそも、今回の内容は犯罪行為を指摘するものですので、事実の確認もなく、投稿・拡散すべきではない内容だと思います」と釘を刺したうえで、次のように続けた。 「『摘示している事実が、名誉毀損に該当しているか?』という評価をしていくので、どのような内容であるかによって、違法となるのかどうかや、その場合の責任も変わります。 たとえば、偽情報を拡散したうえで、『特定のタレントが○○したというタレコミがあったけど、本当なのかどうか。今から調べて行こうと思う』と投稿した場合、『タレコミ』が存在している事実自体も、対象になった人の社会的評価を低下させるところはあります。 一方で、かなりの留保を設けたうえで、かつ『真実がわからない要素がある』と、打ち消しを行った場合『特定のタレントが○○した』とまで摘示しているとは評価されないかもしれません。 なお、『伝聞の形で“~と言っている人がいる”と書いただけで、その特定の事実があったとは言っていない』という言い訳を許さないことも多く、文脈にも依拠するグレーなポイントだという点は、留意してください。 また、今回のケースでいえば、『大麻を常習していた』などの情報を加えたうえで、拡散していれば、それだけ社会的評価を低下させる要素も、あるいは投稿者側が適法性を主張する場合に求められる真実性立証の程度も、重くなります。 ただ、基本的には、社会的評価を低下させる話をするなら、相応の根拠をもってやりなさいというのが法の考え方です」(杉山弁護士)
法的措置「抑止力としては全く足りていない」
では、STARTO社側が法的措置をとる場合、どのような手続きが必要になるのだろうか。 「アカウントが法人によって運営されているなら、その法人にいきなり責任を問うことができますが、個人アカウントによる投稿である場合は、誰によって投稿が行われたか(=誰に責任が発生するか)を確定させなければなりません。 そのためには、別ルートで投稿者が誰か特定できている場合を除くと、発信者情報開示という手続きが必要です。 ですが、会社にも負担がかかりますから、『自ら謝罪し、訂正投稿などを行うのであればお目こぼしをする』などの持ち掛けをし、次はないぞと釘を刺しつつ、相手の情報を握っておくと言うこともありえます。 そして、何らかの形で法的責任を問える状態がそろえば、民事的・刑事的な手段もとれるようになります」(杉山弁護士) ただ、こうした手続きを踏めば法的責任を問えるとはいえ、その制度は十分ではないと杉山弁護士は指摘する。 「法的措置をとったとしても、刑事責任を負わせられない場合、民事上では話題になったことにより得られる収益の方が、被害者の受けたダメージより大きい場合も多々あります。 ですので、現状の法的制度は、抑止力としては全く足りていないといえます」(同前) SNSでの名誉毀損や誹謗中傷は、芸能人やインフルエンサー、スポーツ選手ら有名人のみならず、一般人の間でもたびたび問題になっている。実効力のある対策や抑止力が編み出されることを期待したい。
弁護士JP編集部