休むって難しい? 韓国25万部突破! 『ようこそ、ヒュナム洞書店へ』から学ぶ人生の休み方
ファン・ボルム×山崎怜奈×柳下恭平トーク @下北沢B&B
『ようこそ、ヒュナム洞書店へ』は、韓国ではすでに25万部超のベストセラーを記録し、日本での発売後も「癒された」「読んでよかった」と温かい感想が寄せられています。『ヒュナム洞』は、ソウルの住宅地にオープンした書店です。この書店に集う誰もが悩みを抱え、語り合うことで力をもらう。そんな物語です。 【画像】「夢を持つことに対する韓国社会の最近の変化も、作品に少し込められればと」 11月某日、著者のファン・ボルムさんが来日し、下北沢の「本屋B&B」でトークショーが実現しました。ファンさん、タレントでラジオパーソナリティの山崎怜奈さん、神楽坂にある書店「かもめブックス」店主の柳下恭平さんの3人が集まり、「コミュニティースペースとしての書店の魅力」や「人生につまずいたときにどんなふうに休むか」といった、作品とも通底するテーマで熱く語られた内容をダイジェストでお伝えします! 柳下恭平(以下、柳下)日本でも『ようこそ、ヒュナム洞書店へ』(以下、『ヒュナム洞』)は早くも重版が決まったそうで、おめでとうございます。 ファン・ボルム(以下、ファン)ファン・ボルムと申します。拙著を読んでくださった方、またこれから読んでくださる方に心から感謝します。 山崎怜奈(以下、山崎)山崎怜奈です。よろしくお願いします。 柳下 この物語は、バリバリのキャリア組だった主人公ヨンジュが大企業を退社後に本屋さんを立ち上げて、1年くらい経ったあたりからストーリーは始まります。あちこちに出てくる決めゼリフというか、パンチラインのすごさ、作中で紹介されている映画や書籍がたくさんあって、僕はもうそれだけでもそそられる本になっているなと思ったんです。 山崎 ヒュナム洞書店は、日常生活で心がザワザワしたときや、ひとりでいたら壊れそうなときに、避難したくなる場所だなと思いました。この書店で出会う人たち同士が尊重し合いながら繊細に人と関わる姿に憧れます。この書店でくつろぐ自分を想像しました。 ファン いま山崎さんが「避難所」と言ってくださったんですけれど、この小説を書いていた時間が私にとってもそんな場所でした。どこか逃げ出したいような気持ちになったときに、この小説を書くことになったんです。本書の登場人物たちも、逃げているとまでは言わなくても、立ち止まってどこに向かっていけばいいのか、迷っている人たちです。そんな人たちが少しずつ前に進もうとしている物語でもあると思うので、そのように共感してくださって、とてもうれしく思いました。 山崎 若者や子どもに夢を聞くのはハラスメントになるのかという議論を聞いたことがあるんです。この本でも、書店でバリスタとして働くミンジュンや進路に悩む男子高校生のミンジュンは「夢がないのは寂しい」と言われて悩みますよね。店主のヨンジュはいわゆる書店を開くという夢を叶えた人になるんだろうけれど、順風満帆に生きていけるほど人生は単純じゃないということも描かれています。夢があってもなくても結局あれこれ言われるというのは、実体験としてすごく「わかる」と思いました。 ファン 私も作家になる夢に向かってがんばってきましたが、その夢を叶えたからといって、すべてがうまくいくわけではないんだなというのを身に沁みて感じたんです。夢を成し遂げることがすべてでもないという自分の体験も踏まえて、また、夢を持つことに対する韓国社会の最近の変化も、作品に少し込められればと思いました。 柳下 実感がこもったセリフだからこそ響くんでしょうね。 ファン 韓国では、自分の考えていること、人生についての意味や夢についての深い考えや悩み事をなかなか打ち明けて深く話せる場や関係が不足していると思うんです。だからこそ、私は人々がじっくりと対話をしている姿を見たくて、作品にもそうした場面をたくさん書きました。 柳下 一方で、心の孤独は自分が気づかないところで蓄積されていくように思います。どうしたら、心をオープンにして自分の悩みを相談できる存在を作れると思いますか。 ファン 私もどうしたらそういう存在に出会えるか、作れるのかという質問については簡単に答えが出せません。けれど、もしそういう誰かがいたら、最高の贈り物のような存在ですよね。いまふと思ったのは、まずは自分が誰かのそういう存在になってみたらいいのではないか、ということです。相手の話すことを自分がしっかりと受け止めて聞いてあげる。そうするうちに、自分もいつかそんな贈り物を手にすることができるかもしれないですよね。