全日本4連覇の坂本花織に感じた「風格」、高難度技に挑む「ジュニア勢」に必要なものは…荒川静香の目
フィギュアスケート・全日本選手権。女子は実力が拮抗(きっこう)し、世界選手権代表3枠入りへ、それぞれの選手がチャンスを自覚した戦いで緊張感があった。 【写真】今とは雰囲気が全く違う…連覇がスタートした21年大会の坂本花織
4連覇した坂本花織(シスメックス)は圧倒的にスケーティングの質が高い。一歩一歩の伸びや躍動感、エッジワークの深さ。あれだけステップを踏みながら加速し、演技全体を作り上げる姿に風格を感じた。
ジャンプやスピンの技術的な部分だけを見れば島田麻央(木下グループ)らジュニア勢の方が高難度の技に挑戦し、圧倒的な基礎点の構成に注目が集まるが、滑りのうまさや完成度においてシニア勢との差を埋めるためには、基礎点の高いジャンプを組み込む戦略が必要となるのは、いつの時代も同様だ。
ロシア勢の五輪予選復帰は、国際評価の実績がない現時点での予想は難しい。全日本と同時期に行われたロシア選手権では、高難度のジャンプを成功させる選手が優勝したが、坂本のような滑りの技術、技の質の高さで大きな加点を積み上げるタイプではない。
北京五輪金メダルのアンナ・シェルバコワらは、ジュニア時代から国際的な評価を積み上げた先に五輪を迎えた。今回は実績や評価を積み上げる機会がない状態で、出場枠をかけた予選参戦を経て五輪本番となる。一気に金メダル候補に躍り出るには、圧倒的な総合力で確かな評価を得る必要がある。
男子は有力選手にミスが相次いだが、心配よりも期待が大きい。重圧がかかった中で、自分のもろさを知り、それにどう対処し、体と心を準備するか。今回の失敗が五輪シーズンに生きるだろう。(トリノ五輪金メダリスト 荒川静香)