中小企業で賃上げの動きが強まっていると聞いたのですが、賃上げだけで生活を改善することはできるのでしょうか…?
中小企業における賃上げの流れが注目を集めています。この動きは単に給与の増加にとどまらず、従業員の生活全体に影響を及ぼすものです。しかし、賃上げだけで生活の質が向上するのでしょうか。この記事では、中小企業の賃上げを巡る状況に触れたあとで、賃上げを生活改善につなげるために必要なことがらについて考察します。
中小企業の賃上げを巡る環境の厳しさ
2024年の春闘では、実質賃金の上昇を目指す動きが見られます。賃上げを主導する連合は、ベースアップと定期昇給を含め、5%以上の賃上げを目標として掲げました。しかし、日本商工会議所の見解では、中小企業でこの目標を達成するのは難しい状況のようです。 中小企業が賃上げに踏み切りにくい理由としては、まず、コスト増加分の価格転嫁の困難さがあります。多くの企業が原材料費や電気代の高騰に直面しています。これらのコスト増は、結果として賃上げの余地を狭めているのです。 さらに、非正規雇用の増加も賃金水準に影響を与えています。非正規労働者の賃金は、正社員の4~6割程度にとどまることが多く、全体の賃金水準を押し下げる大きな要因の一つです。また、高齢者の労働市場への参加も、平均賃金水準に影響を及ぼしていると考えられます。
賃上げだけで生活改善につながるか?
賃上げが従業員の生活改善に直結するかどうかは、多面的な要因に依存します。単純な給与増加では、生活の質を全面的に向上させるには不十分です。物価の上昇が給与増加を相殺する場合、実質的な賃金の向上は見込めません。この現象は、特に原材料費の上昇により企業が製品価格を引き上げる場面で顕著になります。 例えば、ある企業が給与を3%引き上げたとしても、同時に生じる製品価格の3%増加は、労働者の購買力を実質的に変えないためです。 この問題を解決するには、単に給与を上げるだけでなく、従業員の生産性を向上させることが重要です。生産性の向上は、生産物の経済的価値を高め、それが給与増加につながります。しかし、生産性の停滞は企業と労働者双方に悪影響をもたらすのです。