WHO事務局長が「コロナ感染に効くワクチンは無い」と発言? ワクチン開発前のニュースの切り取り【ファクトチェック】
世界保健機関(WHO)のテドロス・アダノム事務局長が「コロナ感染に効くワクチンは無い」と発言したとの主張が拡散しましたが、ミスリードで不正確です。2020年8月3日の会見で「(新型コロナウイルスの)感染から守ってくれるワクチンをみんなが期待している。しかし現時点で特効薬はなく今後もないかもしれない」と発言していますが、当時は新型コロナウイルスのワクチンを開発中でした。
検証対象
2024年12月18日、「WHO テドロス事務総長 コロナ感染に効くワクチンは無い と言う」などと主張する投稿が拡散した。 投稿にはニュース番組と思われる22秒の動画が添付されている。「WHO ワクチンに期待高まるも「感染から守る特効薬ない」などの字幕が出た後、以下のようにニュースが読み上げられる。 アナウンサー:WHOは、新型コロナウイルスのワクチン開発が進んでいる一方、現時点では感染から守る特効薬はないとして過度な期待に警鐘を鳴らしました。 テドロス事務局長(字幕):感染から守ってくれるワクチンをみんなが期待している。 しかし、現時点で特効薬はなく、今後もないかもしれない。 投稿は12月20日時点で1600件以上のリポストと約50万件のインプレッションを獲得。 「じゃあワクチン意味ないじゃん」「レプリコン効果ないってよ」などのコメントが付く一方で、「コレ、いつのニュースなんでしょう?」との指摘もある。
検証過程
検証対象に添付された動画には「ANN」の字幕がある。ANNはテレビ朝日系ニュースネットワークだ。日本ファクトチェックセンター(JFC)が、番組の見出しをANNのニュースで検索したところ、2020年8月4日にANN公式チャンネルにアップロードされた「WHO『特効薬ない』 ワクチンの過度な期待に警鐘」が該当した。 元動画の長さは1分だ。そのうち冒頭の22秒間が検証対象の動画と同一だった。つまり、拡散した動画は、ニュースの冒頭を切り抜いたものだ。 2020年8月当時は、いわゆる「Go To トラベル」事業が始まったものの、地方でも感染が拡大するなど「第2波」が発生し、全国的な感染者増加や医療逼迫が起きていた(国立感染症研究所、朝日新聞)。 テドロス事務局長は、この記者会見が開かれた2020年8月3日時点では、新型コロナのワクチンは開発中だったため、「特効薬はない」と述べている。