〈最低賃金が国政の重要課題化〉リーマンショックや東日本大震災、コロナ後も大幅引き上げされたなかで令和の賃上げは…
地域別最低賃金は毎年大幅に引き上げ
これを受けた中央最低賃金審議会においては、大臣の諮問文の中に「現下の最低賃金を取り巻く状況を踏まえ、成長力底上げ戦略推進円卓会議における賃金の底上げに関する議論にも配意した、貴会の調査審議を求める」という異例の文言が入りました。 これに対し、使用者側委員から、初めから引上げありきの一方的な審議ではなく、冷静な議論、実態を踏まえた議論をすべき等の意見が出されましたが、結局八月一〇日に、例年よりもかなり高めの引上げ(Aランクで一九円、Bランクで一四円、Cランクで九-一〇円、Dランクで六-七円)で決着しました。 なお、継続審議になっていた最低賃金法改正案は上述のように二〇〇七年一一月二八日に成立し、その施行は二〇〇八年七月ですから、二〇〇八年最低賃金からが改正法に基づく最賃決定になります。 その後、二〇〇八年のリーマンショック、二〇一一年の東日本大震災という逆風にもかかわらず、地域別最低賃金は毎年大幅に引き上げられていき、二〇一四年には生活保護との逆転現象も解消しました。しかし、二〇一七年三月の『働き方改革実行計画』でも、年率三%程度を目途に引き上げていき、全国加重平均一〇〇〇円を目指すという目標を掲げています。
30年代半ばまでに全国加重平均を1500円に
二〇二〇年はコロナ禍でほとんど引き上げられませんでしたが、その後二〇二一、二〇二二年と大幅な引上げが続き、二〇二三年には岸田首相の強い意を受けて全国加重平均が一〇〇四円となり、遂に一〇〇〇円を超えました。なお二〇二三年八月三一日には、岸田首相が新しい資本主義実現会議で、二〇三〇年代半ばまでに全国加重平均が一五〇〇円となることを目指すと発言しています。 ここで、金額表示が時間額に一本化された二〇〇二年度から今日までの地域別最低賃金の推移を確認しておきましょう。最高値はすべて東京都ですが、最低値は二〇二二年度までは沖縄県、二〇二三年度は岩手県です。 図/書籍『賃金とは何か 職務給の蹉跌と所属給の呪縛』より 写真/Shutterstock
---------- 濱口桂一郎(はまぐち けいいちろう) ----------
濱口桂一郎