ツタンカーメンのマスクやクフ王の船は間に合わず。総工費1520億円の大エジプト博物館がプレオープン
エジプト政府が20年がかりで建設中の大エジプト博物館(GEM)が10月16日、一部の展示室をオープンさせた。同館は「世界最大の考古学博物館」と銘打ち、10億ドル(約1520億円)の予算をかけて2012年の開業目指して建設を進めてきたが、エジプト革命による政情不安やコストの増大、パンデミックなど、次々と困難に直面し延期を余儀なくされてきた。 GEMの延べ床面積は6000平方メートル(東京ドーム10個分)で、ツタンカーメン王の墓から発見された財宝を含む古代エジプトの遺物の最大のコレクションが一堂に展示される予定だ。2023年、GEMはラムセス2世の巨大な像が鎮座する壮大なロビーを公開し、数週間後には巨大な彫刻が展示された6階建ての階段部分をオープン。窓からピラミッドの眺めを楽しむことが出来るようになったが、展示室は閉鎖されたままだった。 エジプト考古省のアッバス・アルタイエブ副大臣によると、プレオープンでは所蔵品のうち少なくとも1万5000点を12室で公開しているという。来場者は試験的に1日4000人に限定している。アルタイエブは、この試験運用によりGEMの過密化しやすいエリアやその他の運用上の問題を特定できると話す。 12のギャラリーは、第3中間期(紀元前1070年頃-664年)、後期(紀元前664年-332年)、ギリシャ・ローマ時代(紀元前332年 - 紀元後395年)など時代ごとに分けられている。だが残念なことに、展示品の中には、ツタンカーメンの「黄金のマスク」や「石棺」は無い。それらを見たければ、タヒール広場にあるエジプト考古学博物館(カイロ博物館)まで足を運ぶ必要がある。 また、同館の目玉とも言えるのが、クフ王が埋葬されているギザの大ピラミッドで発見された、全長42メートルの杉材で作られた船「クフ王の船(太陽の船)」だが、これも未公開だ。 グランドオープン後のGAMには、バーチャルリアリティなどの最新技術を用いた展示や250席の3D映画館、子どものための博物館も備えられる。エジプトの文化財大臣であるハリード・エル=ナニーは、GEMを「エジプトから全世界への贈り物」と表現した。エジプト当局はGEMへの入館者数は毎年500万人を見込んでおり、苦境に立たされている同国の経済状況を博物館が引き上げてくれることを期待している。これは非現実的な数字ではなく、2023年には、エジプトは約1500万人の観光客を迎えている。
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