「これはひどい」学者が警告、機能性表示食品の《お粗末でウソまみれ》な認定の裏側…「論文1本だけで効果あり、正しい治験も行われない」ヤバい現実
1本の論文でも「効果あり」？
「紅麹問題」の収束はまだ先のことになりそうだ。事件の発覚から月日が経っても、健康被害の報告が止まらない。自身の健康のために摂取したもののせいで、かえって体調を崩すようなことになれば本末転倒だが、問題は「紅麹」だけではない。 【画像】なぜこんなに違いが？都道府県別「がんの死亡率・罹患率」ランキング じつはそもそも「健康食品」という存在そのものに驚くほど様々な「ウソ」と「ゴマカシ」が含まれているのだ。 今回問題となった「紅麹コレステヘルプ」は機能性表示食品という部類の健康食品にあたる。これは、特定の健康効果が期待できることを表示して販売される食品のこと。事業者が科学的根拠などを消費者庁に届け出ることで、機能性表示食品として販売することができる。 しかし、届け出は形式的なもので、書類チェックのみで容易に許可が下りてしまう。ここに重大な問題がある。群馬大学名誉教授の高橋久仁子氏が解説する。 「たとえば、『尿酸値を下げる』という商品が多数出ています。これらにはカツオから抽出したアンセリンという成分が含まれていますが、このアンセリンという成分が尿酸値を低下させるという科学的根拠とされている論文は、私が調べた'20年当時はたった1本しかありませんでした」 高橋氏は、「1本の論文をもとに『科学的根拠がある』と主張することは、反復と蓄積を基本とする科学の姿勢に反している」と強く批判する。しかし、こうした1本の論文のみに基づいて「効果がある」と主張する商品は枚挙にいとまがない。
研究の「手法」にも問題アリ
たとえ科学的にエビデンスの少ないずさんなデータであっても、消費者庁はそれを理由に申請を却下することはない。 論文の数だけではない。そもそも研究の「手法」に問題があるものも少なくない。東京工科大学名誉教授で代謝機能研究所所長の今井伸二郎氏もこう指摘する。 「通常の研究であれば、見た目は本物とそっくりだが有効成分の入っていない偽薬(プラセボ)と、本物の薬の2種類を使って実験をおこないます。さらに『ダブルブラインドテスト』といって研究者も、被験者が飲んだのが本物か、偽薬かがわからないように治験をする。 こうして初めて効果が明確に証明できるのです。しかし、機能性表示食品の科学的根拠とされている論文には、そうした手法を用いていない論文がたくさんあります」 たとえば変形性膝関節症に効くとされているコンドロイチンの科学的根拠とされる論文も、ダブルブラインドテストではない。今井氏が続ける。 「コンドロイチンは軟骨に含まれている成分ですが、経口摂取すると糖に分解されてしまいます。砂糖を食べているのと変わらないので、変形性膝関節症には効きません。ダブルブラインドテストで試験しても有効性を得るのは難しいでしょう」
