共同通信の誤報で“外交デビュー”が汚された「生稲晃子政務官」が見せた不安な表情
波紋を呼んだ政務官人事の決定から1週間余り。生稲晃子参院議員(56)の外務政務官デビューの舞台は、11月24日、「佐渡島の金山」追悼式への参列であった。式典開始の直前になって、外務省幹部と共に会場に現れたのだが、階段を下りながら会場をのぞき込むその表情――なんとも不安げな表情を見せるのであった。 【写真をみる】今にも泣き出しそう? “不安いっぱいな表情”の「生稲晃子政務官」 ***
来賓席に座り、佐渡市長と新潟県知事のあいさつに次いで、いよいよ政務官スピーチが始まった。 「本日ここ佐渡島の金山の追悼式が執り行われるに、日本政府を代表いたしまして、ごあいさつ申し上げます……」 さすがの滑舌だ。何でもないこの一節にさえ感情を込めて伝える技術は見事であった。続けて金山の歴史を語り始めると、もう博物館の音声ガイドに使いたいぐらいのクオリティーである。 本来なら、韓国の代表者たちの応対が彼女に与えられた大きなミッションだったはずだ。佐渡金山では戦時中に約1500人の朝鮮半島からの労働者が働いていたとされ、韓国政府は強制労働であると反発してきた。 一方で、政府の立場は2021年に閣議決定した通りで、強制連行を否定している。ただし、ある種の政治的な配慮からか、戦時中に朝鮮半島労働者の徴用が行われ、違反者には懲役・罰金が科されたこと、また、逃走したり収監されたりした者もいたことなどを佐渡市の相川郷土博物館で展示しているとも政府代表ステートメントでは説明していた。このあたりは隣国との融和を配慮したものとみられる。
“誤報”が日韓外交に影響
しかし、韓国からの来賓はゼロ。理由はすでに報じられている通り、日本国内の報道が影響した面もあるという。 「韓国政府の代表や韓国人遺族が出席する予定でしたが、2022年に生稲氏が靖国神社を参拝していたことを理由に出席をドタキャンしたんです。当時、共同通信は生稲氏が参拝したとの記事を配信。韓国外務省はその報道を引き合いに、今回の対応に至ったとみています」(政治部記者) これに対して彼女は、反論はおろか、取材にもなかなか応じず、そのあと視察に訪れた金山の施設でようやく語ったのは、 「靖国神社には参拝していません」。 結局、彼女のこの発言を受けて共同通信が改めて確認を行ったところ、当時の「参拝報道」は誤報であったことが判明。謝罪した上で、「日韓外交に影響した可能性がある」と、記事が引き起こした事態の深刻さにも言及した。 生稲氏の意図せぬ「貢献」があるとすれば、この種の「告げ口」的な記事の問題点が改めて浮き彫りになった点だろうか。靖国参拝など近隣国が問題視しそうなことをわざわざ調べて伝える報道については、もうやめるべきだという声は根強い。結果、日韓の友好ムードが損なわれ、新政務官のデビューを汚したとすれば誤報の罪は重いといえるだろう。 参議院選挙に初出馬で当選し、2年後には政務官。キャリアだけを見れば極めて順調な生稲氏だが、自民党への反発はそのまま政務官就任への逆風につながっている。そして、せっかくのデビューは誤報によってケチがついてしまった。石破政権同様、彼女もまた反転攻勢に転じるきっかけはまだ見つかっていない。芸能界を長い間生き抜き、またがんとの闘いにも勝ってきた経験を外交の場で生かせる日は来るのだろうか。
撮影・西村 純 「週刊新潮」2024年12月5日号 掲載
新潮社