舛添都知事が訪韓 「自治体外交」にはどんな意義があるの?
さる7月末、東京都の舛添知事が韓国を訪問したことがきっかけで「自治体外交」が注目を集めています。歴史問題をめぐって日韓関係は落ち込んでおり、安倍首相と朴槿恵(パク・クネ)大統領との首脳会談はまだ一度も実現していない中で、舛添知事は朴大統領と会談し、安倍首相の日韓関係改善に向けた意欲を伝えました。朴大統領も両国関係が今のようなままであってはいけないと考えていると語ったそうです(「舛添都知事日記」「現代ビジネス」8月5日)。
2種類ある「自治体外交」
「自治体外交」と言っても2つの種類があります。一つは自治体同士の交流で、東京都とソウル特別市との間には共通の問題、関心事があり、従来から協力しています。自治体間の関係増進は国家間の関係にも役立つでしょう。しかし、自治体は国家と国家が行なう外交を肩代わりはできません。その権能は国の法律で決まっており、その範囲内でしか行動できないからです。真の意味の外交は政府の専権事項です。 もう一つは、舛添知事が日本の政治家として政府間の外交に非公式に協力し、推進する役割を担ったことです。舛添氏に限りません。福田康夫元首相が中国をひそかに訪問し、習近平主席と会見して日中関係改善について話し合ったことも注目されました。 舛添氏や福田氏の行動は正規の外交ではありませんが、政府間の関係が現在のような膠着状態に陥っている場合、形式にとらわれずお互いの真意を知る上で役に立ちます。正規の外交では建前もあれば、もろもろの手順を踏むことも必要ですし、また、第三国との関係など考慮しなければならない要因が多数あり、そのため関係改善と言っても容易でありません。非公式の接触では付随的な諸問題はさておき、カギとなる問題について直接的に、率直に話し合うことができます。こじれている関係を解きほぐすきっかけを作ることも不可能ではありません。
もっとも良いことばかりではありません。非公式の接触の結果が正規の関係において実現しない危険もあります。通信手段が現在のように発達していなかった昔は、元首の代理と称する者が意図的に相手を欺いて、自国に有利なように関係を運ぼうとすることが少なくありませんでした。今はそのようなことはまずありませんが、意図的でなくても政府の意図が正しく伝わらないことはありえます。そうなると、あらためて他の方法で真偽を確かめることが必要となるなど非公式の接触には一定程度の危険もあります。