[本田泰人の眼]6月シリーズでは実力差がはっきり出た。今後、日本代表の選手は“3”も“4”もできないと生き残れない
重要になってくるのが「ボールの回り=パス交換」
6月シリーズのミャンマー戦、シリア戦はいずれも5-0。日本は6戦全勝でワールドカップのアジア2次予選を首位通過した。 【PHOTO】日本代表のシリア戦出場16選手&監督の採点・寸評。3人が7点の高評価。MOMは2点に関与した左WB 今回の2連戦で注目を集めたのは、第二次森保ジャパンになって初めてスタートから採用した3バックだ。 ミャンマー戦とシリア戦はいずれもスタートから3バックで臨み、日本が勝利した。しかし、内容はまったく異なるものだ。 ポイントは前半の戦いぶりだ。ひと言でいえば、「ボールの回りが違っていた」。 “Bチーム”で戦ったミャンマー戦では、立ち上がりからゆっくりボールを回してチャンスをうかがっていた。対して、“Aチーム”で挑んだシリア戦では、立ち上がりからスピーディなパス交換を見せていた。 ミャンマー戦は中村敬斗の個の能力で打開していた印象があるが、シリア戦ではコンビネーションでゴールを奪っていた。しかも、前半で3点を決められたのは、シリア戦のメンバーのほうが勢いがあった証拠だ。 後半は4バックに戻した意図は分からないが、ボールがうまく回っていたことを考えると、そのまま3バックで戦っていたら、さらにスコアは広がっていただろう。 サッカーはチームスポーツだ。特に、今回の日本代表は、三笘薫、伊東純也といった個で打開できるスーパーなドリブラーがいない。ならば、特に攻撃においてはグループで戦う必要がある。 そこで重要になってくるのが、先述した「ボールの回り=パス交換」だ。 その点で見るかぎり、ミャンマー戦よりシリア戦のほうが「パス交換」がスムーズだった。その最大の要因は2つ。1つは久保建英がシャドーでうまくボールに絡んだこと、もう1つは右ワイドの堂安律と、左ワイドの中村が機能したことだ。 格下のシリア相手に久保が活躍することは想像できていた。久保の特長は良いところに顔を出し、良いところでボールを受けられることだ。東京五輪から堂安との相性も良く、この2人が同時にピッチに立てば、“あうんの呼吸”で連続性のあるプレーができるから、パス交換もスピーディだった。 ワイドに入った堂安、中村はいずれも2試合連続でスタメン出場した。疲労が不安視されるなか、サイドでの攻防の優位性を保ったのは嬉しい驚きだった。堂安はミャンマー戦でシャドーのポジションでプレーしたが、中村の場合は2試合連続で運動量が求められるワイドのポジションをこなした。 3バックの場合、ワイドの選手の守備力が重要で、どれだけアップダウンできるかがポイントの1つ。彼らは攻撃でも起点になりながら、しっかり走って守備に戻ってスペースを埋めていた。さすがに中村は前半で交代したが、堂安はフル出場を果たした。 いずれの選手も明らかにコンディションの良さを示した。堂安、中村はボールを受けるのがうまい。そういう選手がワイドで走って守備もしっかりしていたのだから、シリア戦で最も評価すべき選手は、この2人になる。 3バックは4バックに比べて、役割分担が明確だ。その分、その選手の力量が出やすい。森保一監督は、誰が出ても同じサッカーができるチームを目ざしているが、6月シリーズを見るかぎり、誰が出ても同じサッカーはできていなかった。むしろ、選手の実力差がはっきり出ていた。 ボール回しで大切なのは、いつどこでスイッチを入れるか――。シリア戦は久保と堂安を中心に、良いタイミングでスイッチを入れてギアを上げながら戦うことができていたが、ミャンマー戦では意図的にスイッチを入れてギアを変えるというより、“中村頼み”でギアが変わった印象だ。